再考「孤独死」
以前も「孤独死」に触れたことがありますが、先般「孤独死」についてディスカッションする機会がありました。そもそも「孤独死」を定義付けるものはありません。おおよその概念として「自宅で誰にも看取られず、一人で死亡していた」ことを発見される、というところでしょう。日本で最大の団地を持つUR都市機構は「7日以上」経過して発見された場合を孤独死と言っています。しかし、日数や時間で区切ることにあまり意味があるとは思えませんし、家族と同居していても、たまたま外出中に倒れて突然死という場合もあります。TVドラマのように、誰もが家族に囲まれ手を握られて旅立つわけではなく、むしろそれはレアケースでしょう。
社会変化と「孤立死」
しかし、いま「孤独死」に変化が起きているといわれます。一人でない孤独死=孤立死が増加しているのです。同居者がいても、お世話している方が倒れるとそのまま要介護者が衰弱死するなど、高齢者や障害のある人、さらに引きこもり家庭など、夫婦・親子・兄弟姉妹の関係でも「孤立死」起きているのです。地域の民生委員さんも、独居高齢者には特に注意してくれるようですが、それだけでも負担が大きくなっている昨今、「同居者がいるから大丈夫」とは言い切れない実態があります。さらに、高齢者や障害がある人ばかりではありません。実際には40代~60代前半のいわゆる働き盛りのはずの単身男性の孤独死も多いのです。離婚や生涯未婚率の上昇で「孤立」する男性が浮かび上がります。
誰もが考えておきたい
死んでしまうと本人はもう関係ないと思うかもしれませんが、誰かがその後の対応をしなくてはいけません。発見の状況によっては、後々まで心的外傷を受けることもあるでしょう。できれば近隣の人との安否確認ができればいいのですが、そういう社会でもなくなりました。自治体によっては、センサー設置の補助をしているところもあります。また、横須賀市は今年5月から「わたしの終活登録」として、生前に万が一のときのことを登録する事業を行政として開始しています。今後、ますます独居高齢者が増える中で、自治体としても取組みを推進してほしいですね。
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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。2016年独立。