高齢期の暮らしと住まい(49)

デンマークのコリング市で出会った野外授業?の様子。引率の先生のヘアスタイルがパンクなのに驚く

自立・自律の背景

昨今は、「要介護でないこと」や「社会的・公的な支援を受けないこと」を「自立」と解釈することが増えていますが、本来は“他からの支配や助力を受けずに存在する”ことを指すので、最近の「要介護は悪、自立は善」というようなゆがんだ捉え方が個人的にとても気になっています。話は少し異なりますが、社会的、文化的な歴史背景が異なるので一概にいえないものの、日本を含む東アジア圏は家族依存が高く、欧米では個人一人ひとりの「自立」が高いといわれます。筆者も高齢者政策や住宅施策の調査研究で多くの国を訪れて、実感することです。社会福祉の充実が評価される北欧も何度か訪れましたが、高齢者住宅に暮らす高齢者と話をしても「自分で決める」「自分で暮らす」意識はとても高いです。

 

デンマークの幼稚園の広大な敷地。危険を回避せず、自分のことは自分でする

デンマークの幼稚園で驚いたこと

「その意識のルーツは子ども時代から」とお聞きし、デンマークの幼稚園の視察に行ったことがあります。緑の多い広大な敷地には、鶏、豚など放し飼い。子どもたちは自然と戯れるということだけでなく、「生と死」も目の当たりにします。幼稚園で動物たちを絞め、調理室で料理をし食べることにも参加。台所は小さな子どもも調理台に届くよう、片側の床が底上げされています。また、木の小屋の中で鋸や金づちなどを使い工作も。先生は「ケガをしたほうがいい、ケガをすると痛みを知り、ケガをしないように注意するから」とのこと。自分のことは自分で守る教育ですね。子どもたちは愛想を振りまきません(苦笑)。他者(知らない人)には警戒心が強いと感じました。

 

工作道具もおもちゃではなくホンモノを使う

善し悪しではないけれど

さまざまな価値観があるので、善し悪しを述べるつもりはありませんが、人生の『サバイバル』を考えたとき、まず基本として「自立心」「ひとりでできる力」があることは重要だと感じます。欧米の人達がお互いを思いやらないかというとまったくそうではなく、自分があって他者への配慮も大きいと感じます。相互支援は「依存」とはまた違います。心身ともに自立・自律することで、お互いに対し手を差し伸べられる部分も大きいのでしょう。

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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。2016年独立。

 


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