高齢者施設のトラブル
最近高齢者介護施設でのトラブルが続いて報道されました。名古屋や旭川の介護施設では90代の入居者に、職員が暴言・暴力を繰り返していたとのこと。身体だけでなく、精神面でいかにつらい思いをしたでしょうか。名古屋の施設責任者は事件後「介護職員が少なく無理をさせた」「担当を外した」と話していたようですが、職員数だけの問題ではないし、被害者の担当を外すことで解決できる問題でもなく、意識のズレを感じざるを得ません。介護の仕事は、介護技術、専門知識に加え、「人」としてのマナーや心理的影響も十分考慮されないといけないものです。介護現場に限らず、働き続ける限り誰もが「教育」「研修」の機会は実に重要です。
逆のケースもありえる
職員による入居者への暴言・暴力がセンセーショナルに報道されがちですが、その陰で逆に入居者による職員への暴言・暴力も現場では少なくないのが実情です。先般もある介護施設の責任者の方に伺うと、少ないものの、職員の身の危険に繋がるような事例はあるそうです。たいていの場合、認知症による本人の混乱から生じるようですが、施設側の苦慮にも心痛みます。その施設では、該当の入居者に職員1人がほぼつきっきりで対応していたこともあるそうです。それでも限度があり、さらに職員でなく他の入居者に被害が及ぶ場合は、「退去」してもらわざるを得ません。とてもセンシティブな課題です。
規制緩和ではなく強化を
話は戻り、施設職員によるトラブルですが、ご存知のように職員不足は深刻な問題です。それにともない、政策としてはさまざまな規制緩和を実行していっています。資格不要で生活支援の仕事を可能にしたり、外国人の介護実習を増加させるなど人材の部分、施設(高齢者住宅等)の基準緩和などです。施設が増加しても、行政による定期的な確認や実態調査などがほとんど行われていません。結局問題が大きくなってからでないと発覚しない。介護人口が増加していく中で、箱を拡げるために緩和するのではなく、トラブル防止のための強化こそが必要なのではないか、と個人的には感じます。
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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。2016年独立。