今日の西日本は台風が大暴れしましたが、皆さんのところは大丈夫でしたか。京都駅の天井が落ちたとか。本当にこのごろの天候は異常ですね。
ご投句をありがとうございました。まずは8月中にいただいた分にコメントと添削例を付けました。ご参考になさってください。9月のご投句分については、もうしばらくお待ちください。なお、投句だけでなく、質問もご遠慮なくお送りください。皆さんの勉強にもなりますので、公開のかたちでお答えしたいと思います。 河原地英武
〇 仰向けの目高に朝日の惜しみなく 万亀子
【句評】死んでしまった目高への愛情いっぱいの句ですね。中七が字余りですので、「朝日の」の「の」を取りましょう。目高へのよい供養になると思います。
△庭下駄の足裏に触るる今朝の秋 万亀子
【句評】庭下駄に足の裏が触れるのは当たり前のことですね。夏の間は汗ばんで、何かべったり張り付くような違和感があったのでしょう。それがある日、すこし涼しくなって、すっと足にフィットする感覚が戻ってきたのだろうと想像します。一例としてこんなふうにしてみました。
添削例……足裏に馴染む庭下駄今朝の秋
〇 夕立や留守居の犬の隠れ場所 える
【句評】留守番の犬はさぞ心細かったことでしょう。このままでも結構ですが、「隠れ場所」をもう少し具体化すると読者に親切かもしれません。
添削例……夕立や留守居の犬は子の部屋に
△ 炎天や蟻を養う蝉の果て える
【句評】あんなに元気に鳴いていた蝉も、最後には蟻を養う餌になってしまうのだという感慨を詠んだ句と拝見しました。問題は「炎天」「蟻」「蟬」と夏の季語が3つもあることです。季重なりも2つまではOKとして、「炎天」を何とかできるといいですね。
添削例……仰向けの蟬の翅より蟻のぼる
〇 着信音変へて酷暑に立ち向かふ とんぼ
【句評】気合の入ったよい句です。このままでも十分ですが、俳句は具体的な描写を入れるとさらに情景がよく見えてきますので、たとえばこんなふうに作ることも可能です。
添削例……着信音変へて酷暑の街に出る
〇 檜扇の葉組清しき祇園かな とんぼ
【句評】ネットで調べたところ、祇園祭の時期に料亭などでは檜扇(ひおうぎ)という植物を生け花にして飾るのだとか。勉強になりました。「祇園かな」としますと、祇園そのものに感動している句になってしまいます。
添削例……檜扇の葉組清しき祇園茶屋
〇 おはぐろの水面離るる光かな おたま
【句評】感覚的でなかなかよい句ですが、この「光」が何なのか、やや曖昧です。おはぐろ自体が光なのでしょうか、それとも水面が光っているのでしょうか。
添削例……おはぐろの水面離るるとき光る
〇 はらからのほのと影浮く大花火 樹炎
【句評】はらからへの親愛感がよく伝わってきます。また叙情豊かな作柄でたいへん結構です。「はらから」と「影」はセットにして、できるだけ離さないほうがベターです。
添削例……はらからの影ほのと浮く大花火
△~〇 亡き妹へ暑中見舞ひの届きけり 樹炎
【句評】「妹」を「いもうと」と読みますと、七七五の変調になってしまいます。古語では「妹」を「いも」とも読みますが、その場合は、自分の妻や恋人をさすのが一般的です。ともかく五七五に仕立て直してみましょう。
添削例……夏見舞亡き妹に届きけり
△~〇 初秋のブランチホットケーキ焼く おたま
【句評】「初秋のブランチ」でいったん切れるのですね。初秋のブランチとして、ホットケーキを焼いたという意味に取りました。片仮名の単語が続くと句が弱くなる気がします。
添削例……夫(つま)と食むホットケーキや今朝の秋
「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスはefude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。