福祉用具は適切に使えばとても便利ですが、使い方を誤ると生活が壊れてしまうことも少なくありません。例えば車椅子は介護保険でレンタル出来、合わなければ借り換えが可能です。ある時、夫のおむつから尿が漏れて困るという相談で自宅に伺ったところ、車椅子は介助型で、夫の体格や状態に合わないために姿勢がずるずると前に滑る状態でした。そこでヘルパーさんが姿勢を直そうとして体を動かすと、パンツ型紙おむつの前方に空間が出来て、そこから尿漏れしていたのです。寝室を見ると、夫のベッドと妻のベッドの隙間が非常に狭い。おそらく福祉用具専門員は「この隙間に入る車椅子が欲しい」と言われたのでしょう。でも、夫は背が高く痩せていて座幅が合ってないし、クッションを使うなどの配慮もない。妻はその男性がこんな姿勢しか取れないのだと思っていますが、その姿勢では食事もしにくい状態でした。
そこで夫の体格や座位保持の状態に合った車いすを勧め、幅の広い妻のベッドをシングルベッドに換えて隙間を広くしました。男性は脳梗塞で片麻痺だけど利き手足は動くので、利き手と利き足で動かせる車椅子にすれば食堂まで自分で移動出来る可能性があり、そうしたものに交換すると、とてもうまくいきました。車椅子はケアマネさんが福祉用具専門相談員のいるレンタル業者に依頼して選びます。中には体の状態を考えないで用具を選ぶ相談員もいて、力量に大きな差があります。ケアマネも福祉用具の知識がない人が少なくありません。誰が適切な用具を選べるのかとても難しいのですが、車椅子選びは非常に大事で、選び方を間違えると介護する人もされる人も生活を損なうことがあると認識しておきましょう。

※「高齢生活研究所」所長 浜田きよ子さんの排泄や福祉用具にまつわる話を、毎月紹介していきます。前回はこちら。排泄に関する相談は排泄用具の情報館「むつき庵」まで。