IoTの便利さと不安
IoT(Internet of Things)という言葉をよく見かけるようになりました。いろんなモノがインターネットを通じて繋がり、利便性が上がるというコトですが、確かに便利なこともたくさんあるものの一抹の不安も感じます。AI(人工知能)の急激な進化も同様ですが、昔子どもの頃に読んだコンピューターに支配されてしまう、手塚治虫氏の『火の鳥-未来編』を思い出さずにいられません。IoTでは、外出先から自宅の冷暖房スイッチを入れたり、自宅中の様子をチェックしたり、外出時には便利な仕組みも考えられています。一方ですでに導入されている顔認識システムなどは、街を行きかう人々をカメラを通して顔認識し、その人のプロフィールがわかってしまうというまるで映画のような話ももう実現化されています。そして、IoTをさらに進めたIoB(Internet of Bodies)、すなわち人体とインターネットをつなぐ(ICチップの埋め込み等)も実用化され、いったい未来はどうなっていくのだろう…と正直不安が大きくなります。
高齢者の見守りの変化
一方で、善し悪しは別として「高齢者の見守りシステム」もIoT活用で進化しています。かつては、家電メーカーが開発した電気ポットの使用状況を家族に送るという仕組みがありましたが、今ではセンサーやロボットなども登場し、中にはその人の体温や睡眠状態なども把握できるものもあります。もうここまでくると見守りを通り超えて「監視」ではないか(苦笑)とさえ思ってしまいますが、不安のある本人や家族からするとやはり便利なシステムといえますね。ロボットの中には、人間や動物の形をしたものもあり、思わず愛着をもってしまうものもあります。とはいえ、非常に繊細なプライバシー問題にもつながるので、どのレベルまで見守りが必要なのか、本人への確認も必須ですね。
一人暮らし高齢者は自治体独自のサービスも
一人暮らし高齢者の割合は今後も増加していきます。それに伴い、緊急時の対応や万が一のときの早期発見など、できれば対処方法を検討しておきたいものです。自治体により異なりますが、独居高齢者の自宅に「緊急通報システム」(急病や緊急事態の際にボタンを押すと消防署等に直接つながる装置)を貸し出ししているところもあります。これには緊急ボタンだけでなく、上記のセンサー(一定の時間を超えて動きがない場合確認の連絡がされる)を伴うものもあります。たとえば京都市の場合は「あんしんネット119」というサービスがあります。IoTの更なる進化にともなって、もっと優れた機能も出てくるのでしょうが、プライバシーと安心のバランスの難しさも感じますね。
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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。2016年独立。