高齢期の暮らしと住まい(14)

健康寿命が延びた

先週末、厚労省が2016年時点の国民の「健康寿命」を発表しました。男性が72.14歳、女性が74.79歳、その前の調査(2013年)よりそれぞれ0.95歳、0.58歳延びたとのこと。健康寿命とは「介護も看護もいらない期間」、すなわち誰の手もかりる必要のない、自立期間といえます。都道府県別では上位と下位で男性2年、女性3年の差が出ており、地域性があるのでしょうか。ちなみに京都は女性が73.97歳と全国で44位と低い位置になっています。しかし、寿命そのものも延びているので、介護期間が短くなったというには、若干無理がありそうです(苦笑)。

 

 

誰かの手を必要とする期間

平均寿命-健康寿命=介護期間とは言い切れないものの、この期間の支援体制は何らかの形で必要がありそうです。男女別ではないですが、WHOが発表した2015年時点の健康寿命ランキングでは、日本は74.9歳でトップ。続いてシンガポール73.9歳、韓国73.2歳と続きます。イギリス71.4歳、ドイツ71.3歳、アメリカは69.1歳と70歳を切っています。この何らかの支援が必要な期間も、日本は9~12年と断然トップです。もちろん長寿は喜ばしいことですが、「生きる」のか「生かされる」のかといった視点も考えなければなりません。医療の発展は素晴らしいのですが、そのような難しい判断も我々に突きつけるのです。

 

必ず来る最期をどう考えるか

「寝たきり」は日本独特の現象といわれます。筆者自身も十数ヶ国の高齢者施設の視察に行きましたが、確かに日本の寝たきり率は異常と感じます。日本の健康保険(医療)制度が他国に比べて手厚いことも影響しているのではないかと感じます。そしてもうひとつは、それにも関連しますが私たち自身の意識です。最近こそ「延命」について真剣に考える人が増えましたが、日本の社会意識として治療拒否は「死ぬ」のではなく「殺してしまう」という意識が高いからでは、と感じます。延命が悪いことだとは思いませんが、何も考えることなく延命措置となり本人も家族も苦しむケースを多々見聞してきました。これからは、ひとりひとり「どうありたいか」を考えていくことが大切です。健康寿命を延ばし、自然に旅立てる、そんな人生でありたいと思う人は多いのではないでしょうか。

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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。2016年独立。

 


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