3月8日に街の本屋さんについて書いてから随分と過ぎてしまいました。今回は京都の本屋さんについて書いてみます。子供の頃、近くの商店街にはたくさん本屋さんがあって、そのうちの2軒をよく利用しましたが、随分前になくなりました。地下鉄の北大路駅がまだ市電の烏丸車庫だった頃、周辺には4軒の本屋さんがありましたが、こちらも全て閉店。但し、車庫に最も近かった大垣書店はどんどん事業拡大して本店を四条に移し、今や市内のショッピングセンターに入ってるのはたいてい大垣、昨秋には東京・麻布台ヒルズにも進出した様で、まさに独り勝ち状態です。
麻布台ヒルズに“街の書店”の存在感 50店目の「大垣書店」 https://t.co/jV1nTuszIn #日経クロストレンド
— 日経クロストレンド (@NIKKEIxTREND) April 16, 2024
うちから少し歩いた下鴨にあった葵書房は当時としては大きな本屋さんで、子供の時は各階を見てまわるのが楽しかったのですが、2022年に閉店しました。
洛北高校前の葵書房が昨年末で閉店してた。下鴨にあった唯一の書店 pic.twitter.com/NUIytCRZOJ
— サワラギ (@YobuneBUNKO) March 14, 2022
近所だけでなく繁華街も同様です。河原町のオーム社、京都書院、駸々堂、ふたば書房を順に見るのも楽しかったのに、すべて閉店(ふたば書房は市役所前の地下街に本店を写して支店もいくつかあります)。専門書が充実していた四条通のジュンク堂もなくなり、同様に幅広い品ぞろえをしていた京都駅前のアバンティブックセンターも今年になって閉店し、今や専門書が充実しているのは、ファッションビルの地下にテナントとして入る丸善だけになりました(アバンティブックセンターの他店舗は現在も営業しています)。
アバンティブックセンター京都店が、2024年1月10日で閉店。最期を見届けにきた。
京都に住み始めてから、ずっと通い続けてきたので、寂しい。ありがとうございました。 pic.twitter.com/ohPdujGYCP
— 本ノ猪 (@honnoinosisi555) January 10, 2024
惜しまれ閉店した大型書店の跡は「日本最大級のアニメ専門店」リニューアル 京都・南区 | 京都新聞 https://t.co/RbuJfAiycu
— 京都新聞 (@kyoto_np) January 24, 2024
先日、今出川の本屋さんに数年ぶりに入ってみると、文庫本はコミックに負けないくらい置いてあっけど、出版社に関係なく作家別に並んでいて、出版社ごとに整然と並べられた売り場を見慣れているので、雑然とした印象で何だか落ち着かない。「世界」を買った本屋さんによると「うちは嫌なんで出版社ごとに並べてますけど、取次店が作家ごとに並べる様に指導するんで、今は作家ごとに並べてる店の方が多いです」とのこと。なるほど、西院の書店も作家順、ショッピングセンターの書店は学術文庫系は出版社ごとだけど、角川や集英社等は作家ごと。いつからこうなっていたのか、今まで気づきませんでした。お客さんが探しやすい様に、ではなく書店員が知らない作家を探しやすい様にする為だそうです。知識豊富な書店員さんが少なくなってるんですね。
前回も書きましたが、どの店も雑誌とコミックが大半を占め、雑誌の中でもエロ雑誌や「Hanada」「正論」といったネトウヨ系雑誌は目立つ様に平場に置かれたり、棚の一番前に置かれています。それ以外は実用書、作家ごとの文庫本。残りの僅かなスペースに絵本だったり、本屋大賞関連の本だったりがほんの少し。でもエロ雑誌はネットで買う人が増え、料理本などの実用書もネットでクックパッドなどを見れば出て来るからわざわざ買う人は少ない、コミックは映画化やドラマ化されたものしか売れない、万城目学の「八月の御所グラウンド」は京都の話なのでそこそこ売れたけど、芥川賞や直木賞受賞作も大して売れないそうです。それでも書店や取次店、出版社などが京都本大賞を作って盛り上げようとしています。
第11回京都本大賞最終ノミネート作品が決定しました
「ちとせ」高野知宙著
「猫を処方いたします」石田祥著
「そして花子は過去になる」木爾チレン著
以上の3作品です
今回も大賞は皆さんの投票で決まります
投票期間:2023年9月12日〜9月30日
大賞発表:2023年10月30日 ぜひご参加ください pic.twitter.com/ort7Ueb1DP— 京都本大賞 (@kyotobontaisho) September 13, 2023
閉店した店から配達を引き継ぐので、配達エリアは拡大して手間は増える。数年前までは何とか盛り返したいという意欲が業界にもあったそうですが、何しろ後継者がいないので、今は諦めてる店が多く、街の本屋さんはここ数年でなくなるだろうと某店のご主人はおっしゃってました。街から本屋さんが消えてもAmazonや楽天ブックスなどで買えるけど、それで良いんでしょうか。実際に読まなくても、家に紙の本がどれだけあるかが学力に影響するという調査があるそうです。高度成長期には月賦で買った百科事典や文学全集が本棚に並ぶ家がよくありました。
子どもの時に、自宅に紙の本が何冊あったかが一生を左右する:大規模調査
──本に囲まれて育った中卒と本がなかった大卒が同じ学力https://t.co/Qf1zKbn9C0#教育 #学力 #読書 pic.twitter.com/Gu2nAeYpat— ニューズウィーク日本版 (@Newsweek_JAPAN) October 19, 2018
早期の読書は、単なる相関関係ではなく因果関係として学力に関係があることが分かってきているけど、本を読まない子は家に本もないし読書文化も無いので、司書さんを充実させるなどの方法で、厳しい環境にある子供への早期の読書支援を展開したい所だよね。https://t.co/yxUILYeNir
— 畠山勝太/サルタック (@ShotaHatakeyama) October 12, 2023
これ、街にも言えるんじゃないかと思っています。近所に書店や図書館がある環境って、知育に大切なんじゃないかと。ただ、そう思って街の本屋さんに入ってみて、今は正直複雑な心境です。雑貨屋を兼ねた恵文社やカルチャー系に強いホホホ座みたいな個性的な本屋は例外として、エロ本が目立つ今の普通の「街の本屋さん」を若い人におススメしたいとは思わない。青少年に成人向けの本は売らないと宣言して、踏ん張ってる書店もありますが、知の劣化が日本に及ぼす影響は深刻だと感じています。あなたの街の本屋さんはどんな品揃え、レイアウトでしょうか?最後に京都府書店商業組合のサイトをリンクしますので、京都にお住まいの方は、最寄の書店を探して、訪れてみて下さい。(モモ母)