文部科学省は、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」という統計を、毎年公表しています。
全国の学校を網羅し、経年変化もしっかり追えるデータなので、引用されることが多いです。そこで不登校状態にある子どもたちの人数の他、その原因も示されています。ただし、この調査で示される原因は、教育委員会が学校からの報告をもとに文科省に報告した「原因」で、実際とはずれているという指摘は以前からありました。
つい最近にも、民間団体による不登校当事者への調査とのズレを指摘する報道がありました。
いじめ「重大事態」大半は見過ごし? 不登校の当事者調査、学校側の判断と大きな開きhttps://t.co/ygMgFbpM3w
西日本新聞さんで、先日行った文科省での記者会見の内容を取り上げていただきました📰— キズキ共育塾 (@kizuki_juku) November 2, 2023
また一昨年には文科省自身が、不登校当事者に対するアンケート調査を行い、結果を発表しています。学校の報告による「原因」とはだいぶ異なる結果が得られています。
なぜか学校が認識しない「不登校の本当の理由」
教員と本人で認識がすれ違うナゾ🏫不登校新聞 の記事を東洋経済オンラインから
いい記事ですね
この分野もデータ分析から別の風景が見えますね🐸#不登校 #学校 #引きこもり #いじめ #先生 #スクールカウンセラー
https://t.co/LOxk3zT0yW— 【ソフィ心理研究所】広報担当-六本木カウンセリングルーム (@sofisinri_pr) November 22, 2021
とはいえ、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」は現時点では、最も安定的に実施されてきた調査であることから、引用されることが多いのですが、この調査で不登校の原因として最多にあげられるのが「無気力」です(下の木村草太さんのツイートの表を参照)。ただこの「無気力」は「原因不明」を意味しているということは、関係者の間では結構よく知られていることなのですが、公開されている報告書を初めて読む人は誤解すると思います(実際、多くの学生が誤解して読みます)。
心理学に焦点理論というものがあります。コールマンという研究者が提唱したものです。個人に対してダメージを与える出来事は様々にありますが、「強度10のダメージを与える出来事」が1回起きる場合と、「強度1のダメージを与える出来事」が10回起きる場合では、実は後者の方が総合的なダメージが大きいことが多いというものです。しかも、「些細なことでしょう」と無理解な言葉をかけられて、それが「11回目の出来事」になることもあります。こうして学校に行くパワーが失われてしまって不登校になる場合、特定の原因を特定しづらくなり、結果として「無気力」と判断されると思われます。
ここから「不登校は甘えだ」とか「親が甘やかすからだ」という誤解が生まれるのだと思いますが、実際の原因は「本人の無気力」ではありません。不登校は様々な原因が複合して生じるということは、今日ではほぼ常識になっていると言って良いと思います。
なお、今年の10月初旬の報道ですが、文科省が再び、当事者へのアンケートを計画しているようです。当事者の声をしっかりと集めていくという姿勢自体は、評価できると思います。データが充実していくことで、誤解も解消に向かうことを期待したいと思います。
<独自>不登校の児童生徒側に直接アンケート 文科省、学校認識とのズレ把握 https://t.co/tX0UtPiPyc @Sankei_newsより
— 木村草太 (@SotaKimura) October 4, 2023
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