カナリア朗読劇場~日本国憲法第14条 第1項

憲法朗読第3シリーズの2回目は第三章 国民の権利及び義務から平等原則を謳った第14条第1項です。日本国民はみんな平等、差別はあってはならないと定めています。朗読はフリーアナウンサーの塩見祐子さん、イラストはかしわぎまきこさん、解説は立命館大学法科大学院教授の倉田玲さん、動画の再生時間は32秒です。引き続き第13条・第81条はこちらからお聞きください。

《第14条 第1項解説
日本国憲法の第14条第1項を読むときには、直前の第13条の前段と同じく「すべて国民は」という主語になっているところに注目するとよいでしょう。日本語や外国語の文章を読み解くときには、文脈(context)から文(text)の意味を知るとよいということもあるでしょう。「すべて国民は、法の下に平等であつて(中略)差別されない」と定められている第14条第1項は、「すべて国民は、個人として尊重される」と定められている第13条の前段と、もちろん述語の部分も密接に関連しています。第14条第1項には、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」という5つの理由により人を分け隔てしてはいけないということが定められていますが、これら5つの理由は、いずれも人が何らかの集団に属するという意味の属性でもあります。筋の通らない「差別」というものは、人が「個人として尊重される」のではないとき、ひとりひとりのかけがえのなさが無視されたり軽視されたりするとき、人の属性による十把一絡げの扱い方が生み出すものです。たとえば「人種差別」や「性差別」という深刻な問題がありますが、そもそも「個人」を「個人」として「差別」することはできません。その人の個性や人格を大切にしようとしないで、たとえばアジア人だから、あるいは男性だから、などという扱い方をするときに、筋の通らない「差別」が生み出されることがあります。

第14条第1項を読むときには、もちろん「法の下に平等」という言葉に注目するのが普通でしょう。せっかくですから、前回の解説に盛り込みました別の条文の言葉も使い回しながら説明しますと、第14条第1項に定められている「法の下」の「法」が、第81条の「憲法に適合するかしないかを決定する権限」を行使する第76条第3項の「裁判官」により、第98条第1項に定められているとおり「その効力を有しない」と判定されることもある「法律」だとすると、その下に使い方だけが「平等」であっても、すべての人が「個人として尊重される」のに十分ではないでしょう。皆の選挙で選ばれる皆の代表者が皆に成り代わり集まって話し合って作り上げる皆の「法律」の内容も、それ自体として、「法律」より上にある「法の下に平等」でなければならないでしょう。「終審裁判所」として違憲「立法」審査権を発動してきた「最高裁判所」も、現に通用している「法律」の内容が第14条第1項に違反しているという趣旨の違憲判決を下すことがありますが、その仕事ぶりの前提には、「法律」の使い方さえ等しければよいというものではなく、その定め方も「平等」でなければならないという第14条第1項の読み方があります。

もう1つだけ、いかにも肝心な「平等」という言葉についても説明させてください。あくまでも「個人として尊重される」というルールと矛盾することなく保障される「平等」ですから、ひとりひとりの個性や人格を無視したり軽視したりして、とにかく一緒くたにしてしまう何でもかんでもの絶対的、機械的な「平等」ではなく、むしろ絶対的の対義語である相対的な「平等」だと読むのが正しいでしょう。相対的の相対を訓読みして、ひらがなで書くと、あいたい、になります。向き合う、という意味の言葉です。事実に向き合い、等しい立場の人々ならば、等しく扱わなければならない、というルールが相対的な「平等」です。たとえば役所などにも「性別」に応じて別々の手洗いが設けられていますが、そこは事実として別々の立場ということになっているのだから、もちろん別々にしてあるのだと理解しておくことができるでしょう。なお、等しい立場の人々を等しく扱わないのが相対的な「平等」に反して筋の通らない不合理な「差別」ですから、人を分け隔てる理由として許されないのは、何も「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」の5つばかりではないでしょう。これら5つに限定しているのではなく、あくまでも5つの典型例を示しているのだと読むのが通例ですが、例には例に選ばれるだけの理由があるでしょうから、典型例に該当する分け隔て方については、とくに不合理な「差別」ではないのかを疑ってかかるのがルールの使い方として合理的でしょう。

※次回は5月31日(水)に第43条・第15条第2項を公開予定です。


Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/canaria-club/www/wp-content/themes/mh-magazine-lite/content-single.php on line 21

Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/canaria-club/www/wp-content/themes/mh-magazine-lite/content-single.php on line 30