昨年4月に「京都府立植物園は今のままが良い」という記事を書きました。植物園の境界をなくして自由に行き来できる様にしたり、植物園の正門前にレストランやカフェ、閉館した旧府立総合資料館跡にシアターコンプレックスを作るといった整備計画を紹介したのですが、どうやら計画の柱となるのは京都府立大学のキャンパス内に1万人規模のアリーナを作ることの様で、そのことを書いてみたいと思います。
京都府立大学の体育館が老朽化していて、建て替えが急務だと言われています。実は国の成長戦略(未来投資戦略2017)で地域活性化の起爆剤としてスタジアム・アリーナを2025年までに全国で20ヶ所を整備しようという計画があり、どうやらこれに乗っかれば国の期待に応え、国からの補助金も期待できると2018年に就任した国交省出身の知事が考えたのではないかと思われます。
国交省データ改ざん事件の責任者だった西脇隆俊氏の知事就任(2018年)と、北山エリア開発、北山アリーナ官民連携協議会メンバーの人事を時系列でまとめてみました。2018年がターニングポイントであったのはよくわかります。#京都府立大学に商業アリーナはいりません #京都府立植物園を守りましょう https://t.co/G8yTpIgOBx pic.twitter.com/gMMwVBj2kS
— みどりのもへじ (@TNo142no2) January 12, 2023
当時は東京五輪でスポーツ熱が盛り上がると期待して各地にアリーナを作ろうとした様ですが、ご存じの様に東京五輪は盛り上がらず。で、このアリーナは地元のバスケットボールチーム「京都ハンナリーズ」の本拠地として使う案があったり、土日はコンサートやMICE(国際会議)にも使用すると府の報告書に書かれていたりして、学生が授業やクラブ活動で問題なく使用できるのか疑問です。また大勢の来場者がコンサートや会議が終了した後、スムーズに移動できるのか、心配の声が地元住民から上がっています。どうして絶滅危惧種や貴重な植物も多い植物園の垣根をなくしたり、バックヤードの規模を大幅に縮小する必要があるのか疑問でしたが、まずアリーナ建設ありきで、京都府から依頼された東京資本のコンサルタント企業が1万人規模の来場者が移動しやすい様に植物園の中を通そうとしたのではないかと考えると、わかる気がします。
そもそも学生数2000人程度の大学のキャンパスに1万人規模のアリーナは必要でしょうか。コンサートや国際会議を行ったり、ハンナリーズの本拠地となるアリーナを作るなら、府内のどこか別の場所に作れば良いと思うのですが、老朽化した体育館の建て替えも兼ねられて一石二鳥という発想が学問軽視、昨今の反知性の象徴の様で受け入れがたいものがあります。静かな環境で研究に集中できる様に整備するのが、大学の町・京都の知事の仕事のはず。計画見直しを求める学生さんも普通の体育館を早く作ってほしいと言っています。
余談ですが、「京都マラソン」が行われる2月19日は植物園が入園無料になり、植物園内をランナーが駆け抜けるそうです。そんな必要ありますか? 一斉に通る訳ではないですが、15000人以上のランナーが園内を走るのは、アリーナ完成後の動線をシミュレーションしたいんじゃないの?と疑ってしまいます。(モモ母)