本日は、6月2日のモモ母さんの「気になるtweet」にも登場していた、こちらの話を詳しく見ていこうと思います。
当法人代表理事榎木のコメントが掲載されています。
国公立大や公的機関の研究者 来年3月に約3000人が大量雇い止め危機 岐路の「科学立国」:東京新聞 TOKYO Webhttps://t.co/v4C3GNFxzL
— カセイケン(一般社団法人科学・政策と社会研究室) (@kaseikenorg) May 28, 2022
全国の大学や研究機関で雇用されている研究者が大量に雇止めになる可能性があるという話です。この記事では3,000人と書かれていますが、4,500人以上に上るのではないかという情報もあります。
10兆円の大学ファンドで新たな地位に就き、潤う研究者がいる一方で、運営費交付金の削減などで、雇用をカットされる研究者がいる。
国立大など 4500人が2022年度末までに雇い止めの恐れ 非正規研究者
田村智子議員の追及で判明 参院内閣委 https://t.co/CXngXnGo0t
— 望月衣塑子 (@ISOKO_MOCHIZUKI) May 20, 2022
2006年に国立大学が法人化されましたが、その前後から全国の大学や研究所では(国公私立を問わず)、研究者の非正規雇用化が進みました。理由は大学等に支給される基盤経費の削減です。大学等の運営にかかる経費は、基盤経費と競争的資金に分けられます。競争的資金とは、数年間の期限付きでやってくるお金で、大学等が獲得競争をして手に入れるものです。いったんは獲得したとしても、3年後や5年後がどうなるかがわかりません。そのため、非正規雇用でしか研究者を雇用できないのです。基盤経費がどんどん削減される中、多くの大学等が正規雇用の教員・研究者の数を減らし、競争的資金の獲得に成功した大学を中心に非正規雇用の教員・研究者を増やしてきました。
他方で、期間の定めのある雇用が5年や10年継続した場合、期間の定めのない雇用に転換しなければならないという法律があります。これは労働者の安定雇用を実現するためのものですが、基盤研究費が削減され続ける大学等にとっては、無理な話なのです。多くの大学等では、期間の定めのある雇用は5年を原則とし、特別な理由があれば10年まで延長できるようにしています。しかし10年を超えて「期間の定めのない」雇用をすることは、法律上できないのです。そして今年度末が、この制度ができてから10年なのです。
10年といえばかなりの長さです。彼女・彼らを雇用している大学としても、継続して雇用できるならしたいと思っていると思います。しかし、競争的資金に頼り続けざるを得ない状況では、彼女・彼らを無期雇用できる人件費確保のめどがありません。
予算総額は大して変わらないのだけど、安定的な財源の割合が年々減っていくので安定した雇用ができる予算がなくなっているのですよね…。
任期付きは任期中に就職活動をしないといけないので仕事に集中できる期間が短くなるし、後進の指導なんてやってられないってことになるのですよね。それが問題。 https://t.co/jULBLWmVHB— 高雄 啓三 (Keizo TAKAO) 富山大学 認知・情動脳科学専攻 で学生募集中! (@keizotakao) June 2, 2022
なお、この件について、「研究業績をあげられなかった研究者だから雇止めになるのだ」という言説がネット上に流れていますが、そうではないという指摘もあります。
これ理研に限らず大学・国研で言われがちな話ですがシンプルで、本当に成果が出てなかったら5年で切られてますね。今回大騒ぎになっているのは10年、15年と生き残ってきたひとが一斉に去ると研究が壊滅的に止まるから。 https://t.co/9oSYHR2FGd
— TOGASHI Yuichi (@togashi_tv) June 2, 2022
他にも、「実際にこれだけの研究費を獲得してきているけれども、来年度の行き先がない」と訴える声もあったりします。
基盤経費減少の影響は、大学の教育環境にも如実に出ています。
院生さんのために設置されていた、PCルームは機器更新の予算がないので廃止され、統計ソフトを買う資金がないので、フリーソフトを使っている。契約電力をけちっているので、夏になると度々エアコンを切らなければならない。上水道ではなく、処理水を使っているので、沸かさないと飲むことは出来ない。
— Kan Kimura from Kobe, Japan (@K_Kimura_Kobe) June 2, 2022
一応、政府なども「大学からお金を削りすぎた」という認識はあるようで、前々回の記事の「稼げる大学法案」などにつながっているらしいのですが、その「稼げる大学法案」も競争的資金を増やすという話なので、問題の解決には全くなりません(副作用の大きさの方が心配です)。
研究者雇い止め問題に関する記事を書きました。記事中で10兆円大学ファンドは「選択と集中」により支援先がごく一部の大学に集中しており、雇い止めやそれに伴う研究者の海外流出は止められないのではないかという懸念を書いています。https://t.co/hf2JTRnPsJ
— 榎木英介 独立系病理医(学士編入) (@enodon) June 2, 2022
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