4,500人以上の研究者が雇止めか?

本日は、6月2日のモモ母さんの「気になるtweet」にも登場していた、こちらの話を詳しく見ていこうと思います。


全国の大学や研究機関で雇用されている研究者が大量に雇止めになる可能性があるという話です。この記事では3,000人と書かれていますが、4,500人以上に上るのではないかという情報もあります。


2006年に国立大学が法人化されましたが、その前後から全国の大学や研究所では(国公私立を問わず)、研究者の非正規雇用化が進みました。理由は大学等に支給される基盤経費の削減です。大学等の運営にかかる経費は、基盤経費と競争的資金に分けられます。競争的資金とは、数年間の期限付きでやってくるお金で、大学等が獲得競争をして手に入れるものです。いったんは獲得したとしても、3年後や5年後がどうなるかがわかりません。そのため、非正規雇用でしか研究者を雇用できないのです。基盤経費がどんどん削減される中、多くの大学等が正規雇用の教員・研究者の数を減らし、競争的資金の獲得に成功した大学を中心に非正規雇用の教員・研究者を増やしてきました。
他方で、期間の定めのある雇用が5年や10年継続した場合、期間の定めのない雇用に転換しなければならないという法律があります。これは労働者の安定雇用を実現するためのものですが、基盤研究費が削減され続ける大学等にとっては、無理な話なのです。多くの大学等では、期間の定めのある雇用は5年を原則とし、特別な理由があれば10年まで延長できるようにしています。しかし10年を超えて「期間の定めのない」雇用をすることは、法律上できないのです。そして今年度末が、この制度ができてから10年なのです。
10年といえばかなりの長さです。彼女・彼らを雇用している大学としても、継続して雇用できるならしたいと思っていると思います。しかし、競争的資金に頼り続けざるを得ない状況では、彼女・彼らを無期雇用できる人件費確保のめどがありません。


なお、この件について、「研究業績をあげられなかった研究者だから雇止めになるのだ」という言説がネット上に流れていますが、そうではないという指摘もあります。


他にも、「実際にこれだけの研究費を獲得してきているけれども、来年度の行き先がない」と訴える声もあったりします。
基盤経費減少の影響は、大学の教育環境にも如実に出ています。


一応、政府なども「大学からお金を削りすぎた」という認識はあるようで、前々回の記事の「稼げる大学法案」などにつながっているらしいのですが、その「稼げる大学法案」も競争的資金を増やすという話なので、問題の解決には全くなりません(副作用の大きさの方が心配です)。


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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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