神社などで運試しにとひいて、大吉だ、中吉だ、凶だと、小さく折りたたまれた紙に一喜一憂する「おみくじ」。望んでいたお告げでなければこんなの、あてにならないわとか思ったり、書かれた言葉を妙にひきずる人、大吉は財布に入れる人などなど。たかが「おみくじ」、されど「おみくじ」です。
「おみくじ」はその多くが山口県で制作されている、という情報は検索したらすぐにわかる時代ですが、二所山田神社の宮司が女性の自立のために大日本敬神婦人会を設立し、その機関紙発行の資金源にと、明治39年におみくじの製造を始めたとあります。いまも女子道社として全国の大半のおみくじを製造されているというのですからすごいですね。昨今はかわいい形態のものや飾っておきたいようなものに入れられているおみくじも出まわり、女子道社だけでなく、制作するところも様々あります。実は私、以前におみくじのデザイン制作をすることになった企業から依頼を受け、おみくじの文言を作成したことがあります。大吉だけでもいろんな文言のパターンを作るので、吉、中吉、小吉…とそれぞれにつき数パターンを考え、第一に、おみくじの言葉なのでかなり神経をつかって、心を込めて、文言を作成しました。納品後はすっかり忘れていたのですが、数年後のある日、テレビで全国のユニークなおみくじ紹介の番組をぼんやり見ていたら、なんと、私が関わったおみくじが紹介されている! 驚きました。思わず録画ボタンを押して、何度も見返しました(笑)。某神社でちゃんとお役に立っているのだなあと感慨深い思いに。
『なんだ、おみくじなんて、そんなもんなんだ』と思われそうですが、たくさんあるおみくじの中から“自分自身”が選び取ったものは、どんな経緯で作られているにせよ、いまの自分に届けられたメッセージだと思っています。神がかりなことを書くつもりはありませんが、たくさんある中から選び、手元に来たものは、それなりの意味があると思うのです。内容をどう捉えようがその人次第ですし、お仕着せるつもりもありませんが、むげに扱って、こんなもの遊びさ、と思ってバカにするのもよろしくないと思います。とはいえ信じすぎて大吉に浮かれるのもまたどうかと。
さて、そのおみくじについての書籍が今回ご紹介する「おみくじ集め ハンドブック」です。サブタイトルのコピー、開運&幸せを呼び込む、は惹かれますねえ。監修は民俗学・文化人類学がご専門の佛教大学・八木透先生。私も京都特集のお仕事で何度もお世話になりました。はじめに、のところで先生が書かれていますが『…「おみくじ」とは籤の前に「御」を二つ重ねた語で、漢字で書けば「御御籤」となる。この漢字を見るだけでもいかにも霊験あらたかそうなイメージが漂ってくる…』と書かれていますが、本当に御御って、重なっていることに(いまごろ)気づき深くうなずいてしまうのでした。
同書では多くの種類(レアもの含む)が存在するおみくじといろいろな形態が紹介され、そのほかおみくじの基礎知識、扱い方(例えば凶を引いてしまった場合の対処など)も丁寧に書かれています。日々の暮らしで迷ったとき、悩んだとき、おみくじがふと、あなたの助けになってくれることもあるのだ、と思えたらいいなあと思う一冊です。(ふるさとかえる)