野菜の生育に適した季節を選ぶことで無農薬の野菜作りの基本形が出来てきた。そこで、少しづつ野菜のPR活動を始めた。マクロビオテックの料理教室で習ったことを活かし取引先のお店の軒先で農家の賄料理を実演し、野菜の対面販売等を行った。助産院では、出産の為入院中の母子の食事に野菜を使ってもらったり通院中の妊婦さんへの販売をしてもらったり、色々とPRに貢献してくださった。徐々に田中農園の野菜の認知度は上がって行ったが、野菜作りの基本形が出来たからと言ってやっとスタートラインに立ったに過ぎない。子供達も成長と共に生活費も増えてくる。身近に前例のない農法へのチャレンジは、若い時の青臭い夢を追いながらも、子供たちが順番に義務教育を終える頃までにそれに見合って収入も増やして行けるのか不安な気持ちが芽を出し始めた。しかしそれは、趣味の野菜作りでは味わうことのないプロの農家としての自覚の芽生えでもあった。何処からともなく涌いてきた根拠のない自信は、いつの間にか坂を上り続ける苦しさに変わっていた。手ごたえを感じていた試作の発酵肥料を本格的に作る事にした。一段と上り坂は険しくなる。
京滋有機農業研究会 会長の田中真弥さんが無減農薬野菜などの宅配サービスの会員向けに連載しているコラム「こころ野便り」を当サイトにも掲載させて頂いています。前回はこちら。