自然出産から学んだことを農業に活かすと言っても直接野菜を育てる技術を学んだわけではない。野菜や虫の声を聞くと言ってもあまりにも抽象的過ぎる。
結局、植物や虫のことを何も知らないことに気付いた。助産婦さんと胎児との対話は、助産婦としての勉強と研ぎ澄まされた感覚と経験からくるもので簡単に身に付けられたものではない。かといって無理やり詰め込んだ知識ではなく、その人の持つ豊かな感性が相まって素晴らしい仕事をされているのだと思う。以前農薬の散布中にこんなことが有った。作業中の私の足元に小さな土ガエルが居た。私の前をピョンピョント数回飛び跳ねコロリとひっくりかえる。それを踏みそうになるとまた起き上がりピョンピョンと数回飛び跳ねてはまたひっくり返り腹を見せる。そんなことを何度も繰り返していた。「邪魔だな少し横に進めば良いのに」と思ったが「やめて。やめて」と言っている様にも感じた。農薬で死ぬのは、病害虫だけではない。その他の諸々の昆虫や小動物にも知らず知らずの内に影響を与えていることを訴えに来たのかもしれない。これが、野菜や虫の声を聞いたことになるのかどうかは分からないが、そんな風に受け取った。しかし、観念的に取組むだけではなく科学的な根拠と言うか後ろ盾になるものが必要だとも思った。そんな時京都に有機農業研究会が出来ることを知り、発足の記念講演に参加させて貰った。
京滋有機農業研究会 会長の田中真弥さんが無減農薬野菜などの宅配サービスの会員向けに連載しているコラム「こころ野便り」を当サイトにも掲載させて頂いています。前回はこちら。