農薬の使用を止めることにふん切りがつかないでいた頃、妻が、第二子を妊娠していることが分かった。助産婦さんとの出会いもあり、助産院での出産も考えたが、結局第一子を出産した産婦人科病院で出産することになった。勝手の分かった所の方が、妻も私も安心だと思ったからだ。
そんな折、助産院での勉強会で田中さんの農業についての考えを聞かせて貰えないかと言う依頼があった。その時は、理想とする農業が出来ているわけでもなかったし野菜も順調に育っているわけでもなかったが、自分の気持ちを整理する為にも引き受けた。勉強会の参加者は、これから子供を作ろうとする夫婦や子育て真っ最中の若い家族それと現役の助産婦さん達だった。そこで今までの自分の経緯を話した。自然が好きで農業を始めたけれど理想の農業には、なかなかたどり着かないことや助産婦さんとの出会いを踏まえて自己肯定出来ることの大切さ等を話したかな。その勉強会での反響は、大きかった。頑張ってくださいの声に大いに励まされた。やろうとしていることが間違いではない。と言う自信も深まった。田中さんの育てた野菜を助産院で使わせてもらえないかとも言ってくださった。ひどい状態になってしまった野菜の中からましな物を選んで買い支えて貰った。有機農業への転換期の一番しんどい時期を乗り越えられたのは、こだわり野菜の業者さんや助産院で出会った人たちのお陰だと思っている。そうこうしている内に妻の第3子の妊娠が分かった。
「この子は、助産院で産もか」と妻に言った。「そうしよう」と妻も言った。
京滋有機農業研究会 会長の田中真弥さんが無減農薬野菜などの宅配サービスの会員向けに連載しているコラム「こころ野便り」を当サイトにも掲載させて頂いています。前回はこちら。