日々の福祉の支援の中で、原点に返ることの大切さを痛感することがあります。
福祉の支援をするときに、配慮しなければならないことの一つは「本人主体」の視点を持つことです。当たり前ですが、一人ひとりの人生は異なっていて、価値観や希望も違うので、その違いを尊重し、その人がどのように生きたいかを尊重することは大切です。また、人生はその人が生きていくものなので、他者が代わりに生きるわけにも行きません。どんな風に暮らしていきたいのか、それを明確に伝えてもらえたら、日々の福祉的支援はどんどん前進するように思います。
とはいえ、「何をどう生きたいか」という質問に答えることは容易ではありません。日々をこのまま平穏に続けて行けたらいい、とおもうのも考え方の一つです。しかし、福祉の支援が新たに始まる場合、「今までと同じように」とはいかないかもしれません。関わる支援者は、「もっと良い、もっと安全で、もっと快適な暮らしを作っていきましょう!」と勢いよくおもっているかもしれません。いずれにしても、その支援者の勢いが、必ずしもご本人と同じ速さや方向や重量と同じ要であるとは限りません。
マズローというアメリカの心理学者は、「欲求5段解説」を唱えています。対人援助に関わる専門職には有名な理論です。人間の欲求は5段階に分けられ、下から順に積み上げられるピラミッドのような図で示されます。5つの欲求とは、下から順に、「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」です。そして、下が満たされると、その上に進み・・・というように昇っていき、最後に自己実現を求める、ということです。
たしかに、おなかが空いて仕方がない日々が続く中で、自己実現のために我慢強く勉強する努力はできないでしょう。安全が脅かされる状態で、所属先で自分を承認してもらえたとしても、喜んでいる場合にはならないはずです。
支援をするからには、ご本人の希望を確認し、今できることを支援したいですし、ご本人も今できることに取り組んでもらいたい!と思うものの、実際は、難しそうです。
しかしそこで「何が難しいのだろう?」と考えることは大切だと思います。生理的欲求や安全の欲求が満たされない生活状態なのであれば、今を生きるのに必死で疲れ切り、少し先の明るい目標は思いつかないかもしれません。もしそうであれば、すべき支援は、未来へ向けたポジティブな気持ちで取り組む何かよりも、まず、生理的欲求や安全の欲求をきちんと満たすことです。
本格的に寒くなってきて、インフルエンザの流行も心配ですが、ここにきてまた新型コロナウィルスの一層の新型が広まっているようです。経済活動も、また停滞するかもしれません。その影響で、お金がなくなり、食料の確保や病院代の支払いが難しくなるかもしれません。
福祉の支援をするときには、福祉専門職は一人ひとりの背景や生活歴に関心を示し、今の状況や課題ははなぜもたらされたのかも確認し、マズローの欲求5階層の下から順に確保を確認することが大切なんだとおもいます。
今年もそろそろ終わりの時期。一年の計画と目標は元旦に考えるので、今のうちに今年や近年のじぶんの仕事を振り返っておこうと思います。