福井の高校生の演劇「明日のハナコ」

全国紙やテレビなどでは報道されていないようですが、福井農林高校演劇部の生徒の演劇「明日のハナコ」が、当初予定されていたケーブルテレビでの放映が中止にされ、さらには記録映像の閲覧不可(DVD作成も無し)になり脚本集の回収が行われた、つまり「なかったことにされる」という事態が発生しました。福井新聞が記事を書いています。


「明日のハナコ」のあらすじは次のようなものです。こちらのページから引用します。
—————–
舞台はある高校。「ハナコ」たちは今度上演する劇の稽古をしている。その劇は、1948年の福井震災から始まって現在までの歴史をたどるものだった。学校のこと、仕事のこと、戦争のこと、原発のこと、未来のこと・・・。彼女たちはさまざまなことを考え、そして成長していく。
————-
経緯をまとめると次のようになります。
9月に高校演劇祭が開かれたのですが、コロナ禍のために無観客での開催になりました。しかし福井ケーブルテレビが録画・放映してくれる予定だったので、生徒たちは演劇を見てもらえると喜んでいたのでした。しかし福井ケーブルテレビから高校演劇連盟に対して「個人を特定する点、原発という繊細な問題の扱い方、差別用語の使用などについて懸念している」との連絡があり、検討の結果「明日のハナコ」は、放映中止・DVD作成無・記録閲覧不可・脚本集回収ということになりました。
しかし、「個人を特定」というのは敦賀市の元市長のことで、差別用語の使用というのは、その元市長が実際に行った発言を引用して「こんなことを言った市長もいる」と説明している部分なのです。政治家の公の場での発言を引用してはいけないなんて、ありえない話です。
また、原発問題の扱い方が指摘されていますが、それを問題にすることこそ表現の自由の侵害でしょう。福井県の高校生が自分たちの未来を真剣に考えて学ぶときに、原発の問題を避けて通れるわけがありません。


なお、「明日のハナコ」の台本は、全文をこちらから読むことができます。


30ページほどの台本です。私も読みましたが、放映禁止を始めとして「なかったことにする」必要のある作品とは全く思えませんでした。
脚本関係者等も懸念を表明しているようです。


台本を書いた元顧問の方などによるブログもできていました。


「なかったこと」にはさせないという思いを感じました。
<追記>
「デモクラシータイムズ」で取り上げられていました。こちらから見ることができます。

上記動画によると、今回のような社会問題を取り上げた作品や、公人の氏名が入った作品は今までにもあったそうで、問題にされなかったそうです。それが今回になって問題にされるというところに、強い懸念を感じます。
———–
西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/canaria-club/www/wp-content/themes/mh-magazine-lite/content-single.php on line 21

Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/canaria-club/www/wp-content/themes/mh-magazine-lite/content-single.php on line 30