憲法に緊急事態条項を入れるということ

5月3日が憲法記念日でしたので、例年のごとく憲法改正の是非についての発言がありました。今年は(どういうわけか)コロナ禍を引き合いに出して「緊急事態条項」を入れるべきという発言があちこちから飛び出していました。なかでも自民党の下村博文氏が「ピンチをチャンスに」(コロナ禍というピンチを改憲のチャンスに)という発言をし、首相も基本的にそれに同調しているという状況のようです。


そこで本日は、緊急事態条項とは何かを考えたいと思います。
結論から先に申し上げると、「内閣が『今は緊急事態だ』と判断すれば、憲法や国会の機能を停止してしまうことができる(内閣が憲法や国会より強い力を持てる)」というものです。個人的にはこの緊急事態条項が、将来また起きるであろう感染症拡大への備えになるのか、全くわからないのではありますが…。ちなみに5月7日夕刻の首相記者会見で、産経新聞の記者が「緊急事態条項を入れたら、感染拡大抑止のために、具体的にどういう対応ができるようになるのでしょうか?」と質問をしましたが、回答はありませんでした(記者会見の文字起こしはこちらから読めます)。
話を戻して、緊急事態条項等とは何かという問題です。短めの動画での説明がいくつかありました。


ご覧いただくとわかるように、Covid-19対応の緊急事態宣言と改憲議論で出てくる緊急事態宣言は全く別のものです。


もう少し長い動画もあります。かつてドイツでナチスが政権を取った時に利用したのが緊急事態条項です。当時のワイマール憲法に緊急事態条項がなければ、ホロコーストなどの悲劇は起きなかったのかもしれません。そういう経緯なども解説されています。


「緊急事態〇〇」という言葉に慣れてしまっている気もする昨今ですが、憲法における緊急事態条項とは何か、改めて理解しておきたいと思います。
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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