「カナリア俳壇」38

いよいよ本格的な秋になってきました。京都の寺町通りでは「藤袴祭」というのをやっているので、仕事帰りに見てきました。また、先程は焼き栗を食べたところです。周囲を見渡せば至る所に句材が見つかります。お互い、コロナに対する用心を怠ってはなりませんが、大いに句作したいものですね。では、早速皆さんの投句をみていきましょう。

○芳しき黄落浮かべり露天風呂    白き花

【評】「黄落(こうらく)」を「黄葉(もみじ)」に直してくれたら結構です。ゆったりとした気分が伝わってきます。

○梓川からの初風白き花    白き花

【評】梓川はわたしの故郷の川です。清らかな流れと爽やかな初風が清楚な「白き花」とぴったりですね。

○あさがほや厨は水に始まりぬ    ひろ

【評】厨は水で始まるのだという断定がいいですね。俳句は断定の詩です。初秋(「朝顔」は秋の季語)の朝の気持ちの張りが伝わってきました。

△伸子張りゆらゆらゆるる秋櫻    ひろ

【評】伸子をかけている仕事場の窓からコスモスが見えたのでしょうか。中七下五がちょっとゆるい感じで、もっと引き締めたい。また伸子張りの最中、視線は窓の外に向かないように思いました。

○東屋の遣らづの雨や薄紅葉    美春

【評】「遣らず」と表記します。しっとりとして情緒ゆたかな句ですね。薄紅葉の淡い感じも結構です。人目を忍んで逢っている二人を連想しました。

△蒸しあがる団子重ねし良夜かな    美春

【評】「蒸しあがる」は現在形、「重ねし」は過去形。順序が逆ですね。「蒸しあげし団子重ぬる良夜かな」でどうでしょう。

△秋夕焼東の雲も赤く染め    徒歩

【評】夕焼け時、東の空も紅くなるのですね。今まであまり意識したこともありませんでした。この句の場合、上五が主語となりますので「秋夕日」「秋落暉」「秋没日」等のほうがいいかもしれませんね。発見はありますが、何かもう一つほしい気がします。

○待宵やまだ二合ある玉箒    徒歩

【評】「酒は憂いの玉箒」を踏まえての句ですね。俳諧味があっていいのではないでしょうか。ただ、李白のころから月といえば酒ですので、類型的な詩情ですね。

○庭で採る一升瓶に糸瓜水    音羽

【評】このままですと「庭で採る一升瓶」と読めてしまいますので(つまり、一升瓶が庭で採れるみたいですので)、一字直します。「庭で採る一升瓶の糸瓜水」。あるいは「庭で採る瓶一升の糸瓜水」とすれば、採っている物が糸瓜水であることが一層はっきりすると思います。

△石垣をせりだす茸臙脂色    音羽 

【評】吟行句としてはこんな句が一つくらいあってもよいと思いますが、臙脂色という色だけをポイントにしたのでは、やや感動が薄いように思います。この調子でこの茸を題材にあと2句か3句続けて作ると、そのあたりで残せる句が出てくるように思います。

○秋草に椅子持ち出して童話劇    マユミ

【評】とりあえず結構だと思います。ただ、「椅子持ち出して」ですと、読書会くらいをイメージし、演劇が始まる感じが今一つ出ません。もう少し劇らしい小道具はありませんでしたか。

◎膝に乗り絵本読む子の声さやか    マユミ

【評】これは素直に詠まれた温かみのある佳句ですね。

△~○稲刈りのほど良く乾く田土かな    織美

【評】「稲刈り」ですから「田土」の「田」は蛇足です。「稲刈やほどよく土の乾きゐて」など、もう一工夫してみてください。なお「稲刈り」の「り」は普通省略します。

△スマホ使ふ卒寿の叔父の秋送り    織美

【評】「秋送り」という季語が歳時記になくて、ネットでも調べましたが出てきませんでした。ともかく人生百年時代ですので、卒寿の方がスマホを使ってもそれほど驚かないように思うのですが・・・。上五の字余りも気になりました。

△秋の蚊や六連の窯の壁熱し    ゆき

【評】中七の字余りが気になりました。それから「壁熱し」ですと、実際に火を焚いているのですね。その壁に触れるのは危険では?廃窯が秋の日差を受けて温かくなっている、といった仕立て方のほうがよさそうです。「壁」も省略し、「秋の蚊や六連房の窯ぬくし」くらいでいかがでしょう。

△炎見る古参の背影窯の秋     ゆき

【評】「里の秋」「虫の秋」「水の秋」などはありますが、「窯の秋」はやや強引な気がします。「背影」という言葉もあまりこなれていません。「炎見る」ですと、顔が思い浮かびますので、「背」をもってくるのもちぐはぐです。「窯の火を見守る古老虫すだく」など、もう少し考えてみてください。

△オカリナの音透き通る綾子の忌    妙好

【評】俳句としてはきちんとできています。ただ、オカリナと細見綾子先生(先師ですので先生と申しますが)がどうも結びつきません。たまたま綾子忌にオカリナの演奏を聴いたとしても、それで取り合わせていいのかどうか・・・。それから、オカリナはいつでも透き通った音色をしているように思います。

◎林檎むく結婚指輪ゆるびたり    妙好

【評】これは面白い句。指がほっそりとしただけ、という解釈にとどまらず、いろいろ深読みしたくなる句です。季語も落ち着きがあっていいですね。

△~○稔り田や雀脅しの鷹泳ぐ      永河

【評】「雀脅しの鷹」を見つけたことが発見ではありますが、それ以上ではありませんね。「稔り田」の米を食われないよう、農家の人が工夫したのだと常識で割り切れてしまう句は今一つ面白みに欠けます。

△曼珠沙華ベートーベンの化身かな    永河

【評】ちょっと言い過ぎでしょうか。「化身」と喩えて一物仕立ての句にするよりも、曼珠沙華とベートーベンを切り離し、取り合わせの句にして、読み手に「そういえば曼珠沙華ってベートーベンみたいですね」と言わせる作りにできたら最高ですね。

△掘りたての茹でたて卓に落花生    多喜

【評】「掘りたての茹でたて」がちょっと表現としてくどいように思われます。「卓に」も要りませんので(「卓に」というと、掘って、茹でて、さらに盛り付けたということまで述べて余計しつこくなりますので)、掘りたての落花生をすぐ茹でた、というところまでの句に仕立て直してみてください。

△~○「わつしよい」の聞けぬ今年の秋祭    多喜

【評】前書に「コロナ禍」と付けておきましょう。いわゆる報告俳句で、今一つ詩情はありませんが、素直に作られた句です。「」は不要です。

△咲き初めてこんな所に彼岸花    万亀子

【評】作者の驚きは伝わってきましたが、「こんな所」を具体的に書いてほしいと思います。でないと、その驚きを読者は共有できませんので。このままですと、日記に書き付けて、作者だけが読むための句にとどまっています。

○朝まだき消え入りさうにつづれさせ    万亀子

【評】晩秋のイメージですね。「消え入りさうに」に実感がこもっています。作者の心細い気持ちも伝わってきました。

△こおろきのコーラス聞きて眼むかな    蓉子

【評】歴史的仮名遣いでは「こほろぎ」と表記します。「眼むかな」はどう読むのでしょう。虫の鳴き声をコーラスや合唱にたとえる句は山ほどありますので、まずはこの「コーラス」を使わずに作り直してみてください。

△虫の声つつれさせとは冬支度    蓉子

【評】「虫の声」「つづれさせ」「冬支度」いずれも季語です。まずは季語を一つにしぼり、再挑戦してください。

○夕風や水輪重ねて鯔跳ねる    維和子

【評】きれいにまとまった句ですね。美しい風景が見えてきます。「跳ねる」は文語にして「跳ぬる」と表記しましょう。

○島の路地笊に莢ごとささげ干す    維和子

【評】莢ごと干すのは当たり前かな、とは思いましたが、骨太のしっかりとした写生句です。情景もよく見えてきました。

△曼珠沙華ひときわめたち秋惜しむ    豊喜

【評】「曼珠沙華」も「秋惜しむ」も代表的な秋の季語です。どちらか一つにしぼって再挑戦してください。

△茄子の実にしょうがひとたれ秋の暮    豊喜

【評】「しょうがひとたれ」がよくわかりませんでしたが、ハウス食品の「特選生しょうが」の類いでしょうか。「茄子」は夏の季語、「しょうが」は秋の季語ですので、「秋の暮」と併せると季語が3つ。まずは季語が1つの句を目指してください。

次回は10月27日(火)に掲載の予定です。前日午後6時までにご投句頂けると幸甚です。 河原地英武

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。


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