成年後見の仕事をしていると、さまざまな相談や質問が舞い込みます。・・・ということで、前回の続きとして、よく聞かれる素朴な疑問にお答えします。今回は、下記の3つについて書きます。
③ 成年後見人等はお金持ちの人のための制度?
④ 成年後見人等への報酬が高いからお金のない人は使えない?
⑤ 成年後見人等はお金の管理だけをする人?
③ 成年後見人等はお金持ちの人のための制度?
この質問は、しばしば聞かれます。また、成年後見制度について世間話で上がった時にも「うちは、お金がないから関係ないね」という反応がよくあります。
成年後見制度は、財産を管理する役割であるというイメージが強いようですね。しかし、成年後見制度で成年後見人等が行う役割は「財産管理」だけではありません。もう一つ「身上監護」という大切な仕事があります。身上監護とは、ご本人が安心し、安全に、ご自身らしい暮らしができているかを確認し、出来ていない場合は必要な支援を取り入れて生活を守っていくものです。これは、どんな人にも必要な支援です。
また、財産管理はお金がない人には関係ないと思われがちですが、年金や生活保護による収入が支出と拮抗する場合など、ギリギリをやりくりするにはそれなりのスキルが必要です。費用が安くなる公的制度の手続きなども必要です。認知症等になり、記憶力や理解力が低下した状態では、ギリギリの家計をやりくりすることが難しくなる場合も多いです。
というわけで、成年後見制度はお金のある人だけではなく、日々の暮らしのお金の管理や暮らしの状態を守る人が必要となった方全ての人のための制度、といえるでしょう。
④ 成年後見人等への報酬が高いからお金のない人は使えない?
これもよくある質問です。やはり、「報酬が高いとお金がないから払えないし…、使えないですよね」と思われているようです。
成年後見制度は、任意後見と法定後見の二種類あります。任意後見は、本人が「後見をあなたにしてほしい!」と思う人と話をし確認し公正証書を作って行うものですが、この場合は報酬は本人と任意後見人となる相手の二人で相談をして決めます。一方、法定後見は、家庭裁判所に成年後見・保佐・補助の開始を申し立てて、家庭裁判所が成年後見人等を選びます。この場合、専門職として成年後見人等をしている人への報酬は、本人の財産を見て、家庭裁判所が決めます。
本人の財産がないに等しい場合には、報酬が出ないこともあります。最近では、各市町村が成年後見制度の利用を援助する事業を行っていて、その中では報酬について助成事業もあるので、本人から報酬が出せない場合にも報酬がもらえる場合も増えてきています。
そのように話をすると「え?場合によると、タダ働きですか!?」と言われますが、実際のところその可能性もあるのが現状です。
⑤ 成年後見人等はお金の管理だけをする人?
③でも述べましたが、成年後見人等の役割は、「財産管理」と「身上監護」です。身上監護は、本人が安全安心に暮らし続けられるように支援します。入院が必要であれば入院の手続きをし、介護が必要であれば介護サービスが受けられるように手続きを行います。
基本的には、「入院先から洗濯ものを持って帰って洗濯する」とか「一人暮らしの本人の家に定期的な買い物をして持っていく」などの、生活を具体的に助ける行為は、成年後見人等の仕事ではありません。あくまでも、それが実現できるように手配を行い、必要な契約を行います。
とはいえ、実際のところは、限られた財産の中で、限られた福祉・介護制度やサービスではカバーしきれないものも多々あり、それぞれの専門職だけではなく、地域の皆さんと本人がお互い様の関係性を作り、続けていくことは大切だと思います。
成年後見制度が2000年に始まり、20年。まだまだ身の回りで「成年後見人」を見たことがないという人も多いでしょう。しかし、市町村単位では、「市民後見人」の育成を行い、実際に市民後見人として活躍されている方も出てきています。「裁判所」や「申立て」など、普段の生活になじみにくい言葉や場所のイメージもありますが、成年後見人等は、これからの社会でより一層必要になるものであろうと思います。
私も専門職後見人の一人として、制度を利用される方の暮らしを暖かく見守り、地域社会から信頼されるような活動を心掛けていきたいと思います。