カナリア朗読劇場~「日本国憲法」第41条・第43条

龍谷大学政策学部教授で「憲法9条京都の会」事務局長の奥野恒久さんの解説による憲法朗読第4シリーズ3回目は、第四章 国会から「国会の地位」を定めた第41条と「両議院の組織」を定めた第43条です。大日本帝国憲法下では貴族院・衆議院のうち、選挙で選ばれるのは衆議院のみ(しかも選挙権があるのは25歳以上で一定の金額を納税していたお金持ちの男性だけ)でした。日本国憲法が定める国会について改めて確認しておきましょう。
朗読はフリーアナウンサーの塩見祐子さん、イラストはかしわぎまきこさん、動画の再生時間は54秒です。引き続き前文はこちらから、第20条はこちらからお聞きください。

《第41条・第43条解説
日本国憲法のもと、この国の主権者は国民です。そして憲法前文に、「日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」とあるように、国民を代表する機関として国会を位置づけています。憲法41条が「国会は、国権の最高機関であり」とするのもこのことのあらわれでしょう。この「国権の最高機関」という規定について、学説の多数説は、憲法は権力分立制を採用しているのだから、国民代表機関である国会へのリップサービスであって、特段の意味はないといいます。しかし私は、国会こそ国政全般について最高の責任を負う地位にあると述べた規定だと考え、たとえばこの規定を根拠に、国会の衆議院・参議院は国政調査権を積極的に行使して、主権者国民の知る権利に仕えるべきだと考えています。
近年、内閣の権限が強くなっており、トップダウン的に重要な問題が決められる傾向にあります。2022年12月に岸田内閣が閣議決定した国家安全保障戦略など、いわゆる「安保三文書」は、岸田首相自らが「安全保障政策の大転換」というほど重大問題です。敵基地攻撃能力を保有するとか、これまでGDPの1%程度としていた防衛費を2027年度には2%にするとか、防衛産業を育て武器輸出を進めるとか、「専守防衛」を掲げる「平和国家」日本として確立してきた原則を軒並み崩していくものです。それも、十分な国会審議もないなかでです。国会審議がなければ、メディアもあまり報じませんから、国民も関心を示しません。国民の関心がないなかで、重要なことが決まるというのは、重大なことではないでしょうか。
私は、国会には国民に、国政の重大問題とそれをめぐる争点を可視化する役割もあると考えています。国会には、政府与党に対しそれを監視・批判する野党が存在します。与野党が重要問題につき活発に論じ、ときに対立することが、国民の関心と議論を促すのではないでしょうか。改めて「最高機関」としての国会と、野党の存在の大切さを強調したいものです。
次に憲法43条は、国会(両議院)が「全国民を代表する選挙された議員」で組織されると規定しています。この規定により、国会議員は選挙区や支援団体など選挙母体の代表ではなく、全国民の代表なのです。地元選挙区に利益をもたらそうと奔走することは議員の役割ではなく、全国民的見地に立って論じることこそ議員の役割なのです。もちろん、全国民的見地に立った政治的立場は多様です。「軍事力による平和」という立場もあれば、「軍事によらない平和」という立場もあるでしょう。それらを「代表」するのが国会なのです。だとすると、そのような多様な立場をできるだけ正確に国会に反映することを、憲法43条は要請していることになります。選挙制度の点検は必要な課題です。一つの選挙区から当選者を一人しか出さないのが現在、衆議院で主として採られている小選挙区制です。果たしてこの選挙制が、多様な立場を正確に反映する選挙制度なのか、改めて考えたいものです。

※次回は6月13日(木)に第52条・第53条・第54条を公開予定です。


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