「カナリア俳壇」101

五月も下旬となり、いよいよ初夏らしくなってきました。外を歩けばたくさんの季語に出会え、創作意欲も高まりますね!

△鶯に負けじと口笛朝散歩     作好

【評】中七が字余りです。俳句では上五や下五の字余りは許容されますが、中七の字余りは調べを悪くするので極力避けなくてはいけません。「鶯に競ひ口笛朝散歩」としておきます。

△春風や若き牧草波を打ち     作好

【評】春の季語に「若草」がありますが、「若き牧草」もその傍題と見ることができます。つまりこの句は季重なりです。また、若草は波打つほど長くありません。これは春というより初夏の景ではないでしょうか。

○鯉幟泳ぐ大空子は遠に     美春

【評】しみじみとした情感の句です。「子は遠に」がやや表現として硬い気がします。普段使いの言葉でいいのでは?たとえば「子は遠し」など。

△~○ゆるゆると足元過る蝸牛     美春

【評】蝸牛はゆるゆる歩むものなので、この句には意外性といいますか、驚きがありません。詩はまず驚きから生まれます。たとえば「靴のうへ登りてきたり蝸牛」など、何か読者の目を引くワンポイントがほしいところです。

◎法灯の油にほへる清和かな     徒歩

【評】嗅覚を働かせた、感覚的な作品で、季語の力なのか、どこか典雅な雰囲気もありますね。大変けっこうと思います。

◎反転の胴うねらせて鯉の夏     徒歩

【評】上五、中七の描写が豪快で、いかにも夏の鯉らしい。下五を「夏の鯉」とせず「鯉の夏」とした工夫にも感心しました。音だけ聞くと「恋の夏」も連想されますね。それはともかく「夏」をクローズアップさせることで生気みなぎる句となりました。

○~◎薔薇回廊抜けし富士山仰ぎけり     千代

【評】「浜名湖花博にて」との前書があります。すっきりとした構図で、薔薇と富士の美しい景が思い浮かびます。中七、「抜けて富士山」でどうでしょう。

△~○児と行けり金魚柄の浴衣着せ     千代

【評】まず、中七が字足らずです。また、「行けり」だと読み手は「どこへ?」という疑問を抱きます。「児と町へ金魚の柄の浴衣着せ」など、もうすこし推敲してください。

△~○火葬場の煙一閃三光鳥     妙好

【評】「一閃」が煙に付くのか、三光鳥のほうに付くのか、曖昧な点が惜しまれます。「火葬場の煙のなかを三光鳥」など、推敲してみてください。

◎白玉やはらから五人うち揃ひ     妙好

【評】季語のイメージと相俟って、仲のよい爽やかな5人が思い浮かびます。

○初夏の島風に絵馬鳴り止まず     実花

【評】気持ちのよい島風が感じられます。一般論ですが、俳句は否定より肯定の形で述べたほうが素直で明朗になります。たとえば「初夏の島風に絵馬鳴りどほし」といった具合です。ご参考までに。

○フラメンコ回れば汗の散り光る     実花

【評】意味はよくわかりますが、切れがないため単なる説明文になっています。「フラメンコ光の汗を飛び散らせ」などとすれば、より詩的表現になりそうです。

◎さへづりや杖つき越ゆる和田峠     万亀子

【評】明るい季語がぴったりで、気持ちの充実感も伝わってきます。固有名詞も効いていますね。

◎お点前は本陣座敷緑さす     万亀子

【評】この句は「本陣座敷」がポイントですね。上品で格式の高いお点前を連想します。季語も瑞々しく、いい感じです。

△クマバチと香が足止むるエゴの花     ゆき

【評】まず「クマバチ」と「エゴ」は平仮名(もしくは漢字)で表記してください(俳句の場合は昆虫図鑑や植物図鑑ではなく、歳時記の表記に従うこと)。また、「香」と「えごの花」はワンセットですので、切り離してはいけません。とりあえず「熊蜂とえごの花香に足止まる」としておきます。

△薫風やミラーを過ぎる自転車の子     ゆき

【評】まず、何のミラーでしょう。カーブミラーでしょうか、それとも作者が運転する自動車のサイドミラーでしょうか。また、下五の字余りはこの句の調べを悪くしています(音読してください。もたついた感じがするでしょう)。とりあえず「薫風や自転車の子のヘルメット」としておきます。

○ギシギシや背中むずむずしてゐたる         永河

【評】「ギシギシ」は和語なので平仮名にしましょう。「ぎしぎし」「むずむず」と同じ音を重ねた語を2つ持ってきたところにウイットを感じます。背中のむずがゆさは実感なのでしょうね。

○つばくろの空は自在な万華鏡           永河

【評】燕の目に映る景は万華鏡のようなのかもしれませんね。「自在な万華鏡」はへんですので、とりあえず「自在なるつばくろの空万華鏡」としておきます。

○青春のメロンソーダを娘と共に     智代

【評】よく気持ちが表れています。けっこうでしょう。「娘」を消し、「青春のメロンソーダを我もまた」とする手もあるでしょうか。

◎病む友の声に安堵や梅雨の月     智代

【評】「余命宣告を受けた友」と前書があります。しみじみとした情感をたたえた句です。季語もよく合っています。

◎よく笑ふ赤き服の児さくらんぼ     織美

【評】同じ赤色同士で、この児とさくらんぼがお似合いですね。幸福感にみちた句です。

○~◎麺すする音のさわやか夏来たる     織美

【評】音に注目した、鋭敏な感覚の句です。「一息に啜るさうめん夏来たる」とするのも一法でしょうか。

△~○夏草や造り酒屋の跡地には     欅坂

【評】「跡地には」に説明臭を感じますので、このへんが何とかなるといいですね。「その昔造り酒屋や夏の草」などもう一工夫してみてください。

○長屋門天井うらに燕の巣     欅坂

【評】そんなところにも燕は巣を作るのですね。字余りでも「の」を入れ、「長屋門の天井裏に燕の巣」としたほうがいいかもしれません。

○花かんば野麦峠にみねの墓     久美

【評】素直に詠まれた句でけっこうです。ただ、ネットで調べると、政井みねさんの墓は生家のあった場所に近い専勝寺に建てられているとのことですが、「野麦峠に」ということで大丈夫でしょうか。ご確認ください。

○薫風や山道走るツーリング     久美

【評】初夏の気持ちよさが伝わってくる句です。自解によれば、このツーリングはバイクの一団とのことですが、そのあたりは読者の鑑賞に委ねていいでしょう。

○草笛にトンビの答ふ昼下がり     白き花

【評】のどかな気持ちになる句です。「昼下がり」をカットし、「草笛を吹けば応ふる鳶かな」とする方法もありそうです。

◎草笛を吹きて唇むず痒し     白き花

【評】実感のこもった句です。実感ばかりでなく、草笛を吹いた在りし日のことを懐かしく思い出させてくれます。

○玉垣をのぼり百足の逃げ惑ふ    百子

【評】しっかりと観察した句です。途中に切れが入るとよりパンチが効くように思います。たとえば「逃げ場なき百足玉垣のぼり詰め」など。

○たつた今孵りし目高影をひく    百子

【評】孵ったばかりの目高はあわあわとしていて、むしろ影のほうが存在感があるのでしょうね。「孵りたる目高の影のつと動く」など、もう一工夫できそうな気がしました。

次回は6月11日(火)の掲載となります。前日10日(月)の午後6時までにご投句いただけると幸いです。河原地英武

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。


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