大人の思いではなく子どもの権利が重要ー非同意・強制型共同親権の審議開始か(1)

現在の日本では、未成年の子どもの両親が婚姻関係にある場合は共同で親権を持ち(共同親権)、離婚や未婚の場合は父母のどちらか一方が親権を持つ(単独親権)ようになっています。この制度を変更して、離婚後または未婚の両親が共同で親権を持つようにするという法案が、今国会に提出される見込みです。法案の作成までには様々な議論があり、「共同親権が原則」という案から、「共同親権も可能」という案まであったと理解しています。結局、今国会に提出される見込みの案は、「父母が合意できない場合には裁判所が強制的に共同親権と決める」という内容になりました。つまり、非同意・強制型共同親権です。また法制審議会は全会一致が原則なのですが、今回は反対する委員もいる中で、強引に「まとめた」法案となりました。


「夫婦は離婚しても、親子はずっと親子だ」という言葉をよく聞きます。それは間違いではないと思います。しかし、「だから共同親権だ」というのは、論理に飛躍があります。親権を持たなくなった親でも、子どもと交流することはできますし(面会交流)、養育費を支払う義務もあります。親権がないから親子関係が断絶するわけではありません。


婚姻関係がなくなった場合の、未成年の子どもの親権・共同親権の問題に関する議論で私が気になるのは、「権利主体としての子ども」という意識が薄い気がすることです。


授業で学生にアンケートを取ったこともあるのですが、日本の社会では子どもの権利のうち、「子どもを大事に保護する」という側面についての理解と比べると、「子どもが自分の意見を表明する」、「子どもが自分で選択する」といった、「自立した個人としての子どもの意見等を尊重する」という事柄に関する理解は低い傾向があります。さらに難しいのは、子どもは自分の意見を表現する能力が不十分なため、仮にその子が「~したい」と言ったとしても、それが本心かどうかがわかりづらい場合もあります。子どもの意見を聞きとって関係者に伝える(アドボケイトといいます)専門家もいますが、日本ではその人数も十分ではありません(アドボケーターに限らず、教育や保育の場で子どもたちのために働く大人・専門職の人数が少なすぎることは周知のことかと思います)。
このような中で、両親が同意しない場合に裁判所が強制的に共同親権を命令することになった場合に何が起きるのか、非常に心配です。
憲法学者の木村草太さんのコメントがわかりやすかったので、紹介しておきます。


共同親権に慎重な、自民党も含めた超党派の議員の会合もありました。


次回記事でも引き続き、子どもの権利からこの問題を考えたいと思います。
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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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