大学教育・高等教育のユニバーサル化と「楽しむ力」

2024年になりました。今年もよろしくお願いいたします。
昨年末に、大阪観光大学という大学でシンポジウムがあり、コメンテーターとして参加しました。


私自身にとって、学びの多い一日でした。その中で出てきた考え方に「楽しむ力=楽力」というものがあります。これは従来型の学力の代替案として、山田良治さん(現在は大阪観光大学学長)が提案しているものです。

高校卒業後の教育を高等教育(higner education)と言います。日本では、大学・短大・専門学校などが相当します。働く人たちのイラスト教育を受ける権利が基本的人権として普及し始めたころ、それは基礎教育や初等教育を受ける権利をさしていました。実際、現在の世界にも、基礎教育すら受けられない人が存在しています。しかし同時に、基礎教育だけを基本的人権とする時代は終わったともいえます。2021年にユネスコが出した最新の報告書では、「生涯にわたって質の高い教育を受ける権利」を基本的人権であるとしています。


これは、人々が尊厳ある労働に従事して、幸福に生活するためには、高等教育や社会教育などにもアクセスできることが重要だという認識に基づいています。そして実際に多くの国々では、大学教育・高等教育への進学率は上昇してきました。
進学率が上昇すると確かに、従来型の勉強には適応しにくい学生が増えます。しかし実際に彼女・彼らの多くは、入学した大学等で着実に成長していきます。医療・福祉・技術関連の資格を取る人も多く、私たちの暮らしは彼女・彼らの支え無しでは成立しないでしょう。
何がそれを可能にしているのか、別の角度から言うと、従来型の勉強が苦手な人達が、大学で伸び伸び学んで、しっかり成長できるようためのポイントは何か? そして、これらの問題に対する回答は、高得点低学力と言われる問題の解決にもつながるのではないか(いわゆる高偏差値大学にも有効なのではないか)?旅行に行く若者のイラスト
そして注目されるのが「楽力」です。何かを楽しむことは無条件にできることではありません。芸術もエンタメも、食事も旅行も、そして学びも、そこに対象が存在すれば楽しめるわけではありません。また同時に、不適切な楽しみ方も存在します。例えばカジノのように、誰かを犠牲にして楽しむのは、正しい楽しみ方ではないでしょう。他者への共感と協働を尊重して楽しむのが楽力です。
そして少なからぬ子ども・若者は(そして大人も)、楽しむ力を伸ばす機会がなかったり、抑圧されていたりしています。「周りは全員敵だ」と言われて競争させられてくる子どもたちもいます。抑圧されていた楽しむ力を、思いっきり解き放つ機会を得ることで、学生達の「楽力」が駆動し、成長や飛躍の大きな一歩を踏み出す。大阪観光大学のシンポジウムでは、3年生と4年生の学生が司会を務めていました。きっと大学生活を楽しんで進んできたのでしょう。学生た楽しむためには教員が楽しまなければならないので、各教員が楽しいことを追求する初年次学生向けの演習が開講されているそうです。
私自身がこれまでに関わらせていただいた教育現場でも、「楽しむ力」は意識的にも無意識的にも重視されていたように思います。今年は「楽力」をキーワードにしながら、いろんなことを考えていきたいと思っています。
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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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