「カナリア俳壇」90

先日の中秋の名月は見事でした。秋の到来を実感するこの頃ですね。わたしも句材をみつけて近所を歩いております。

○棚越えしどこまで延びる南瓜蔓     作好

【評】上五、「棚越えて」でどうでしょう。「棚越えてどこまで伸びる南瓜蔓」。または「棚越えてもつと高くへ南瓜蔓」など。

△こほろぎは合奏止めて早寝かな     作好

【評】虫の声というと「合奏」という言葉がすぐに出てきます。そんな句がたくさんありますので、まずは類想を乗り越え、オリジナリティーのある表現を探求しましょう。「鳴き止みしこほろぎ我も早寝せむ」など。

△青薄き御嶽山や夏燃ゆる     ゆき

【評】「夏燃ゆる」は言い過ぎでしょうか。「薄青き御嶽山や炎暑なる」など。

◎千日紅供へ一日の始まりぬ     ゆき

【評】気持ちの張りが伝わるいい句です。

△~○いが栗を持て余したる子犬かな     美春

【評】仔犬のどのような行動を美春さんは「持て余し」ていると判断したのでしょう。その判断の元となった子犬の行動を写生してください。たとえば「いが栗に離れては寄る子犬かな」など。

△~○八方へ児等に追はるる飛蝗かな     美春

【評】もうすこし表現を整えましょう。「児等追へば八方へ散る飛蝗かな」など。

△車窓より見え隠れする満月や     白き花

【評】いわゆる「車窓」俳句をよく見かけますが、自動車の窓でしょうか、電車の窓でしょうか。乗物のなかから見たにせよ、それは読者にとっては大きな問題ではありません。「車窓」を省略して作ってみてください。「トンネルを抜け満月の近づきぬ」など。

○鶏頭をやうやく抜きて根の太き     白き花

【評】類例のないユニークな鶏頭の句です。「引き抜きし鶏頭の根の太きこと」とする手もありそうです。

○~◎むかご蔓引けば亡き母寄するごと     妙好

【評】郷愁をさそう句です。下五の「寄するごと」にやや難を感じます。「むかご蔓引けば亡き母ゐるやうな」などもう一工夫できそうな気がします。

○妻の背のジッパー下ろす月明り     妙好

【評】ジッパーを下ろしているのは夫でしょうか。自画像にして「月明り背のジッパーに指掛くる」くらいでどうでしょう。

△~○鷺釣って得意顔の子海青し     翆

【評】「鷺」は「鯊」の間違いでしょうか。「子の笑顔青き海より鯊釣つて」でいかがでしょう。

◎本殿に芒括られ月見会     翠

【評】写生の行き届いた、風格のある良句です。

◎新米を炊きあげおはぎ仏前に     千代

【評】描写も具体的で、作者の思いが伝わってくる句です。

△草むらに蟬の抜け殻風に舞う     千代

【評】「風に舞う(ふ)」ですと、空中を飛んでいる感じですが、実際のところどうなのでしょう。「草むらの風に空蟬飛ばしやる」と考えてみました。

◎新調の眼鏡を磨く良夜かな     徒歩

【評】童話の挿絵を見るような、気持ちのほっこりする作品です。

◎叩きつつ彈きたるベース夜は長し     徒歩

【評】小粋な店で演奏を聞いている景を思い浮かべました。「夜は長し」がうまい。お楽しみはこれからだ、といった感じですね。

◎秋うらら町屋の中華長のれん     織美

【評】「長のれん」に焦点を当てたところがお上手です。「町屋中華の長のれん」でいかがでしょう。

○秋の雷えぐり流るる畑の土     織美

【評】たいへんな雷雨だったのですね。語順を入れ替え「畑の土えぐり流せり秋の雷」としてみました。

◎木曽晴れて山峡悠と赤とんぼ     万亀子

【評】のびやかで大らかな、気持ちのよい佳句です。

○~◎稲の秋日に一便のバスの行く     万亀子

【評】こちらものどかな景色が魅力的です。「日に一便のバス行けり」でどうでしょう。

○曼珠沙華呼び覚ましたり青き空     永河

【評】上五、下五がともに名詞のため、呼び覚ましたのが曼珠沙華なのか、それとも青空のほうなのか、一読したとき迷います。前者なら「青空を呼び覚ましたり曼珠沙華」、後者なら「青空が呼び覚ましたり曼珠沙華」(または「青空に呼び覚まされし曼珠沙華」)でしょうか。

○刈つてよと稲田さざめく萌黄色     永河

【評】童話のような作品ですね。好みの分かれる句ですが、こうした口語俳句に挑戦するのも一興でしょう。

○夜の逝けり黙々と剥く落花生     りん子 

【評】上五が重すぎないでしょうか。何か怨念を抱いて落花生を剥いている感じがします。「黙々と剥く落花生夜ふけまで」「黙々と剥く落花生夫の留守」など、もう少し穏やかな表現にしてはいかがでしょう。

◎篝火の猛る無月の能舞台     りん子

【評】こちらも情念のこもった句ですが、古典に通ずる格調の高さを感じました。

○過ぎし日や栗を拾ひに風の朝     ひろ

【評】過去の回想であっても、作品としては現在只今のこととして作って差し支えありません。上五はカットして、たとえば「風の朝栗を拾ひに裏山へ」などご一考ください。

○献体の塔へきざはし曼珠沙華     ひろ

【評】「献体の塔」「きざはし(階段)」「曼珠沙華」と物が3つあり、やや焦点が絞りづらくなっています。「きざはし」を消し、献体の塔と曼珠沙華だけで仕立てられないでしょうか。実物を見たことがないので、想像になりますが、たとえば「献体の塔に寄り添ひ曼珠沙華」など。

○身をゆだね馬と常歩萩の風     智代

【評】何に身をゆだねているのか、曖昧に感じました。常歩(なみあし)の馬に乗っているのでしょうか。「並足の馬に身ゆだね萩の風」などもう一工夫できそうですね。

◎ゆさゆさとダンスのリズムいぼりむし     智代 

【評】「ハラビロカマキリ」と前書があります。たしかにカマキリはこんなふうに身をゆさぶりますね。ユーモラスで楽しい句です。

△~○新涼に祝ふ記念日瀬戸市政     久美

【評】「祝ふ記念日瀬戸市政」はただの説明ですから、この部分は前書にすれば十分でしょう。俳句にすべきはどう祝ったかです。吹奏楽団のマーチがあったとか、空に風船が放たれたとか、具体的な祝典の様子を描いてください。

△~○最年少七冠祝ふ秋の瀬戸     久美

【評】「最年少七冠祝ふ」は前書にしてください。肝心なのは、瀬戸市がいかに祝ったかです。盛大に花火を打上げたとか、その他、絵になる景を描写してほしいと思います。その部分が俳句になるのです。

○~◎秋の火蛾赤ちょうちんに揺れて居り     恵子

【評】すこし哀愁があって、俳諧味たっぷりですね。「赤ちやうちん」と表記しましょう。それが読みづらいと思えば、「赤提灯」と漢字にしてください。なお、「居り」は「をり」と平仮名にするのが一般的です。

○色変へぬ松や薩摩の武士の念     恵子

【評】「木曽三川」と前書があります。宝暦治水と薩摩藩士や家老の切腹を踏まえた作品ですね。「武士の念」が観念的ですが、引き締まった句で、とりあえず結構でしょう。

次回は10月24日(火)の掲載となります。前日23日の午後6時までにご投句いただけると幸いです。河原地英武

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。


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