「学校教員になったら奨学金の返還免除」という話題をきっかけに、3回連続で学校教員のなり手不足問題を取り上げました。23-24日の土日にお彼岸でもあったので、日野町(滋賀県蒲生郡)に帰省していたところ、日野町立図書館で「橋本忠太郎展」をやっていました。滋賀報知新聞でも紹介されていました。
橋本忠太郎は、NHKの連続テレビ小説「らんまん」の主人公の牧野富太郎(ドラマでは万太郎)とも親交があった在野の植物学者(または博物学者)です。ドラマの中の万太郎と同様、採集した植物を抱えてあちこち歩いていたようです。「忠太郎さんは電車に乗るといつも座れた。植物がいっぱい入った荷物を持っている彼を、他の乗客が敬遠して(怖がって?)離れていったから」という、ちょっと笑えるエピソードも紹介されていました。
牧野とやりとりした手紙や葉書、一緒に写っている写真も展示されていました。ドラマでは出てこないのですが、牧野は「結網」という雅号を使っており、手紙の最後には「結網」と書かれていました。意味は推測するしかないのですが、案内をしてくださった方によると「網はネットワークで、植物採集をする人々のネットワークを自分は結んでいくのだ」ということではないかとのことでした。確かに、日本の植物学の父と言われる牧野の功績は、彼とつながっていた日本中の人々によって成し遂げられたものでした。
さてこのようなことは、牧野に限ったことではありません。大学や研究機関の研究者が、自分でやれることには限界があります。日本各地に在野の研究者がいて、その地域の植物や歴史、文化などを調査して報告してくださいます。大学の研究者はそうやって寄せられる情報を得て、研究を進めていくこともあるのです。私が関わっている教育関係の研究も、日本各地の教育実践を研究的に振り返って報告してくださる先生方がいるから、成立していると言えます。そして植物学にせよ、歴史学にせよ、これらの在野の研究者の多くが学校の先生です。橋本忠太郎もそうでした。
しかし現在、学校の先生方の労働環境は大変厳しいです。その中でも研究を続けている人もいますが、大変なことだと思います。先生方の労働環境の問題は、子どもたちの学習・発達環境の問題であることはもちろんのこと、日本の学問の危機でもある、そんなことをつくづく思いました。
橋本忠太郎が収集した植物の中には、絶滅の危機に瀕しているものや絶滅してしまったと思われるものもあります。私が小学生の時に登った綿向山の景色(植物が生えている景色)は、現在では大きく変わってしまっていることも知りました。素晴らしい展示で感動すると同時に、なんとなく切なくもなりました。
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