かわらじ先生の国際講座~アフリカ諸国とロシア、ウクライナ

昨今、ウクライナ戦争をめぐる問題で、アフリカ諸国の名をよく目にするような気がするのですが、いかがでしょう?

そのとおりですね。近年影響力を増しているグローバルサウス(130ヵ国前後)のなかでもアフリカ諸国(54ヵ国)は最大勢力ですから、注目されるのは当然です。長年、西欧諸国の植民地にされてきたアフリカは、全体として反欧米的な傾向があり、冷戦時代には政治的、経済的、軍事的にソ連と緊密な関係を築いてきました。ソ連崩壊後、ロシアの影響力は著しく後退し、代わって中国が殊に経済面で、アフリカにおけるプレゼンスを急速に拡大させています。しかしロシアのプーチン政権は、ウクライナ領クリミアの併合後、アフリカにおける軍事的関与を増大させ、20ヵ国以上と軍事協定を締結し、さらには民間軍事会社「ワグネル」を通じて陰に陽に軍事支援を行っています。食糧やエネルギーの供給面でもアフリカにおけるロシアの存在感が大きいことは周知のとおりです。

とすると、ウクライナ戦争でもアフリカ諸国はロシア寄りなのですか?

今年3月2日に国連で、ウクライナからのロシア軍即時撤退を求める決議案が投票にかけられましたが、賛成が141ヵ国、それに対して反対5ヵ国、棄権35ヵ国、この問題の審議への不参加12ヵ国でした。「反対」「棄権」「不参加」はロシアへの非難を回避する立場だったと理解してよいでしょう。そのなかにアフリカ勢は26ヵ国ありました。つまり、アフリカ諸国の半分は、ロシアを非難する側に立たなかったということになります。ただし、逆の見方をすれば、アフリカの約半数はロシアを非難したわけで、このへんの揺れがアフリカの「今」を映し出しているのでしょう。

アフリカ諸国の半数はウクライナ寄りといえるのですか?

そう解することもできますね。それに、ロシアを非難しなかった国々もけっしてロシア寄りというわけでなく、厳密には中立の立場をとろうとしている国が大半なのだと思います。つまり状況次第なのでしょう。その点はロシアもウクライナも承知しており、対アフリカ外交を活発化させています。
ウクライナのクレバ外相は、5月22~29日にアフリカ5ヵ国(モロッコ、エチオピア、ルワンダ、モザンビーク、ナイジェリア)を訪問し、食糧安全保障面での支援(穀物輸出)を行ってきたことを強調し、「ウクライナ・アフリカサミット」の開催を計画していると公表しました。このサミット計画は、ロシアが2019年10月にロシアのソチで「第1回ロシア・アフリカサミット」を開き、今年7月26~29日にサンクトペテルブルクで「第2回ロシア・アフリカサミット」を開催予定であることを念頭に置いたものでしょう。
するとロシアのラブロフ外相が、クレバ外相と張り合うかのように5月29~31日にアフリカ諸国(ケニア、ブルンジ、モザンビーク)を訪問したのです。

アフリカ諸国は、ウクライナ戦争の帰趨に影響を及ぼし得るのでしょうか?

6月16~17日、アフリカ7ヵ国(南アフリカ、コモロ、セネガル、ザンビア、エジプト、コンゴ、ウガンダ)代表団がウクライナとロシアを訪問し、首脳会談を行いました。アフリカ側は交渉による紛争解決を提案し、いわば和平の仲介役を買って出たのですが、ウクライナもロシアも非は相手国にあるとし、建設的な成果は見られませんでした。各種報道をみるかぎり、アフリカとしては安定した穀物供給の確保が主目的だったように思われます。

アフリカ側の懸念が的中したかのように、ロシアは7月17日、黒海を経由するウクライナ産穀物の輸出に関する合意を停止すると発表しました。こんなことをすればアフリカ諸国の反感を招くことになりませんか?

穀物合意停止で困るのはたしかにアフリカです。そしてアフリカを困らせることが、この合意停止決定の目的の1つだったように思われます。プーチン政権はアフリカ諸国に対し、「ロシアとウクライナのどちらをとるのか?ウクライナの側につけば、ウクライナ産の食糧さえも来なくなるぞ」と脅しをかけたのだとも解釈できるからです。6月下旬の「ワグネルの反乱」以来、アフリカにおけるロシア軍の威信も低下し、ロシアとしては今、アフリカにおける自らの地歩を固め直す必要に迫られていると考えられるのです。

ロシアはアフリカ諸国に恭順の姿勢を求めているということですか?

露骨に言えば、そういうことになりますね。7月26~29日、サンクトペテルブルクで開催予定の「第2回ロシア・アフリカサミット」に注目したいと思います。アフリカからは約50ヵ国のトップが一堂に会します。ロシアは厳しい制裁下において、これらアフリカの国々をいかに味方につけるつもりなのか、プーチン大統領の手腕が問われます。ことによると穀物合意の件も、何らかの取引材料にされるのかもしれません。
もう一つは、8月22~24日に南アフリカのヨハネスブルクで開かれることになっているBRICS首脳会議。こちらも重要です。プーチン氏はオンラインでの参加ということになりそうですが、グローバルサウスを牽引する代表国の会議だけに、その決議は国際社会に大きなインパクトを与えそうです。反欧米、反G7で結束する場となるのか、そのような事態は回避されるのか。このへんはラマポーザ南アフリカ大統領の外交手腕にかかっていると思われます。

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河原地英武<京都産業大学外国語学部教授>
東京外国語大学ロシア語学科卒。同大学院修士課程修了。専門分野はロシア政治、安全保障問題、国際関係論。俳人協会会員でもあり、東海学園大学では俳句創作を担当。俳句誌「伊吹嶺」主宰。


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