京都府大学生が体育館を使えない土日が年間70日、部室も撤去ー北山地区アリーナ建設問題

カナリア倶楽部ではモモ母さんが何度か執筆されている、京都市の北山地区へのアリーナ建設計画に関連する話題です。
3月4日-5日に開催された大学評価学会の年次大会において、「青年の発達保障委員会」主催のセッションで、「北山エリアを考える府大学生有志の会」の学生さんたちが話をしてくださいました。


学生さんたちはこれまでに、大学の内外でしっかりとした調査を行った結果をベースに、このアリーナ建設で京都府立大学の学生生活がどのように破壊されるかについて、説得力のある話をしてくれました。今日はその主な内容を紹介します。
建設が計画されているアリーナは、京都府立大学の学生数の5倍の規模の収容人数です。また利用は「学生優先」という説明がされることがあるようですが、実際はそのようなことはありません。
特に土日は、集客を目的にした各種の試合やイベントが行われるため、「学生は年間70日の土日に体育館使用不可」となります。土日は年間で105日程度ですので、7割近くです。これでは室内スポーツの部活は活動ができません(卓球場もなくなるそうです)。
また、大規模アリーナを建設する土地確保のために、学生用施設(いわゆる部室)が取り壊され、代替の場所も用意されません。室内スポーツのクラブ活動だけでなく、屋外スポーツや文科系の部活も活動場所を失います。
つまり、学生が部活・サークルなどの課外活動を行うことが、著しく困難(または不可能)になることが懸念されます。
他に、これは学生さんの報告にはなかったテーマですが、体育の授業実施が大幅に制限されるのではないかと、私は危惧しています。アリーナは平日昼間は空いていることもあるでしょうが、夕方から観客を入れた試合が行われる場合などは、午後にはその準備が始まると思います。大学の授業は、夏休みなどを除けば毎週行われるものです。「今週は体育館で授業ができたけれど、来週は休講」というわけにはいかないのです。
さらに、学生さんも言っていましたし、他の方々も指摘していますが、人込みや騒音による安全性と学習環境の劣化が非常に懸念されます。なにせ学生数の5倍の人々が、娯楽を目的に集まってくるのですから。


このように京都府立大学の学生にとって、大変に重要な問題であるにもかかわらず、この問題の意思決定に学生は参加できません。それどころか、情報すら与えられていない状態です。報告をしてくれた学生さんの調べでは、この問題に関する資料が「公開」されている場所を知っている学生は1割程度でした。部室の撤去に関しても、9割以上の学生が「部室は必要」と回答しています。七夕イベントを開催して、願い事を書いてもらったところ、「これからも自然と仲良しな大学であってほしい」、「弓道場をください」といった「願い事」が500本近く集まったそうです。
なお、京都府立大学の現在の体育館は老朽化しており、震度6の地震で倒壊する可能性が非常に高い状態にあります。それを「改善」するという名目もあって持ち上がった巨大アリーナ計画だったという側面もあるようですが、京都府には「教育施設としての体育館」の修繕を行う義務があり、「体育館を治してやるから、(学生生活を破壊する)巨大アリーナを作らせろ」というのは筋の通らない話だと思います。
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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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