最近、あまり書いていなかったので、成年後見の仕事について書いておこうと思う。この時期、所属している職能団体へは、受任している案件に関して報告する時期でもあり、すべての案件のこの1年を振り返る。そこで、振り返って考えたことを書こうと思う。
成年後見制度については、福祉の仕事をしている専門職からみると「必要だ」と思われる機会はしばしばあると思う。身寄りがなく、認知症が進み、生活のいろいろな場面で支援が必要になったとき、日常の介護やお買い物や掃除などであれば何とか支援ができるが、賃貸を借りたり退去したり、施設へ入所したり、入院するなどになると、支援できる方法やサインできる人が限られるからであろう。
ご本人からは、成年後見人等(等というのは、ほかに、保佐人や補助人という肩書もあるので、裁判所等の書類の表記はしばしば成年後見人等と書かれる)の存在は、時にありがたく思われ、時にありがた迷惑に思われている存在だと思う。成年後見人等は、まず大抵ご本人の財産を管理するため、それまでご本人が自由に使っていた(そして、その結果ときどき金銭管理にトラブルが生じることもあったかもしれないが)のに、他人がそこに介入し口を出してくるのだから、いわゆる「ウザい」存在となるのはわかる気がする。生活について口を出す頻度や内容は、ケースバイケースかもしれないが、やはりここでも窮屈に感じられている場合があるかもしれないな、と思う。
私の場合は、社会福祉士という仕事柄、身寄りのない方等家族の支援が期待できにくい方の支援の機会が断然多いのだが、家族が介護やサポートを熱心にされるケースもあるし、必要な時には協力してくださるご家族がある場合もある。成年後見人等は万能ではなく、例えば手術が必要な際に医療同意はできないので、ご家族がある場合には協力いただけるととてもありがたい。いろいろ事情があり、成年後見制度を利用されることになったと思うが、ご家族に対しては、家族以外の成年後見人等が着任することが、「他人が口を出してくる」と不快に思われることが極力少なく、「何かあっても、成年後見人等がいるから安心」と思ってもらえると良いと思う。もちろん、私は成年後見人等としてはご本人尊重が一番だと考えるが、同時に、家族や親族との関係性の維持や可能なら少しでも良い安定につながるようにすることは、やはりご本人のためにも良いと思うのでそう考える。
『成年後見人は財産管理(だけ)する人だ』とか、『成年後見人がつくと、通帳を持っていかれて、お金が全く使えなくなる』とか、『成年後見人が、お金を使わせてくれない』という声を耳にすることがある。ご家族や、ご本人から、そのような話を聞くことがある。もちろん、その背景を詳しく聞かないとわからないことが多々あるので、もしかしたら、使ってもらえるお金がないのかもしれないし、ご家族が思うような使い方はご本人の意思や状況からすると難しい場合もあり得る。ただ、世の中ではどうもまだまだ「成年後見人はお金を管理する人(で、しかも、お金を使わせないように厳しく管理する?)」と思われている部分が多いようなので、私は声を大にして言いたい。
『成年後見人の仕事は、財産管理とともに、身上保護…つまり、ご本人が、ご本人の安心と安全も考えながらご本人が望む暮らしの実現に近づけるようにサポートすること』
さて、私が自分自身で振り返ると、まだまだご本人の話を聞いて、様子を見て、取り組めることはありそうだと感じる。もちろん、成年後見人等は基本的には事務方なので、介護や介助などの行為は福祉や一般のサービスを利用したり、その分野の専門職と協力することになる。なので、ご本人やご家族も含めた協力体制をより強固にし、より良い生活への支援ができるように考えていきたいと思う。
今現在、家庭裁判所が専門職として成年後見人等に選ぶのは、弁護士、司法書士、社会福祉士の3つの職種である。その中で社会福祉士は、特に福祉に専門性を持ち、しかも、「つなぐ」とか「多職種連携」が得意な職種である。時に、法律の知識が必要な場合には、弁護士さんや司法書士さんとも連携し、ご本人を支えるために必要な支援を得ることもある。「社会福祉士って何をする人?」とよく聞かれる。成年後見人等を受任する際の社会福祉士の専門性は、パッと見てわかりやすいものではないけれど、暮らしを続けていく中で、何かがスムーズに動き始めるのを感じてもらえるような仕事ができれば、それが社会福祉士の存在の証にもなるんじゃないだろうか、と思ったりもする。
人間は何をするにも一人ではできないし、お金だけでも幸せになれないし、お金がうまく使えないと必要な時にお金がなくて困ることになるし・・・。結局は生活の中のいろんなバランスをとることが大切だな、と思う。成年後見人等として、ご本人の暮らしの中で、良いバランスを見つけて保てるような働きを心がけていきたい。
さぁ、また新しい年度がすぐに始まる。
頑張っていきましょう!