Weekend Review~「小林かいちの世界-まぼろしの京都アール・デコ」

小林かいちは大正時代の叙情画家。大正ロマンを代表する画家と言えば竹久夢二で、かいちは殆ど知られていません。私も初めて知ったのは2008年。京都精華大学で開催された「小林かいちの世界-京都アールデコの真髄展-」を観て、その世界に惹かれ、画集を買い求めました。長らく本棚に入れたままだった画集をクリスマスを前に久しぶりに眺めてみました。

かいちは三条新京極の角で天保年間から土産物屋を営んでいた「さくら井屋」が販売した絵葉書セットや絵封筒のデザインを手がけ、当時の女性たちの人気を集めたそうです。着物やドレスを着た女性が物憂げにうつむいていたり、京都らしい後ろ姿の舞妓さんだったりとメランコリックな絵柄が多いのですが、アールデコ調の装飾は夢二よりモダンで、デザイン性が高い印象です。松井須磨子の「ゴンドラの歌」の影響らしくゴンドラを描いたものがあったり、トランプや薔薇、ガス燈、キャンドルなどと共に多用されているのが、教会の鐘や十字架といったキリスト教関連のモチーフ。ツリーなどクリスマスを描いた作品もあって、いずれもエキゾチックで、静謐な雰囲気を漂わせています。今のクリスマスは明るく楽しいイメージでエキゾチックさはあまり感じませんが、私が子供の頃は楽しさだけでなく、どこか異国的な情緒を漂わせていた気がします。日本にクリスマスケーキを定着させた「不二家」はひたすら明るい。でも当時の関西には物悲しいメロディの「バルナス」CMも流れていました。かいちの作品にロシアテイストはないものの、ノスタルジックな雰囲気を例えるなら「不二家」でなく「パルナス」です(若い人や関西以外の人にはわからない説明で申し訳ありません)

京都で活躍したかいちですが、遺族が名乗り出るまで長らく本名など詳細不明で、謎の画家と呼ばれたそう。明治生まれの祖母や美大(現・京都芸大)で洋画を学んだ母は知っていただろうか、聞いてみるんだったなと思ったりしますし、さくら井屋もあまり行かないまま閉店して残念です。伊香保にかいち作品を常設展示している美術館があるそうで、いつか行ってみたいものです。(モモ母)


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