Weekend Review~「白い犬とワルツを」

「白い犬とワルツを」は2018年に「犬にまつわる3冊」として紹介しているんですが、最近読み直したので、改めてレビューしたいと思います。2005年と2006年に読んで、その度に号泣してました。16年ぶりの再読です。

最愛の妻を亡くしたサムのところに不思議な白い犬が現れるテリー・ケイのベストセラー。年老いたサムの歩行器に犬が足をかけて立ち上がり、一緒にまわる姿がダンスを踊っている様に見えるのがタイトルの由来。とても素敵なタイトルです。余談ですが、私は映画「リバーランズスルーイット」が大好きなのですが(ブラッド・ピットのファンではなく、モンタナの美しい自然に魅了されました)、イギリス人の友人が「退屈な映画だ。何も起こらない」と評していました。「白い犬とワルツを」も人によっては退屈だろうと思います。描かれるのは老人の静かな日々で、大きなイベントと言えば青春時代を過ごした町で行われる同窓会に家族に内緒で出かけることくらい。しかも気後れして肝心の同窓会に出席しないので、「何も起こらない」といえばその通りの小説です。それでも亡き妻との思い出の場所を訪れ、おそらく最後の開催になるであろう同窓会を終えた幹事役のマーサと語らう場面は印象的です。「もう私たち、会うことはないわね」「会えるさ。百まで生きよう。百になったら同窓会をやろう」そういえば、要介護の父が同窓会だか教え子の同窓会だかに急に行くと言い出して、「事前に言ってくれないと無理でしょ」と言って止めたのを思い出しました。無理してでも連れていけばよかったなと今になって思います。

以前読んだ時は一人で生き抜こうとするサムに共感していましたが、今回はサムが白い犬の幻を見ているのでは、ボケたのではとおろおろする娘たちの気持ちがリアルに伝わってきました。この16年の間に父が認知症になり、看取りを経たことで、きっと自分も娘と同じ様な態度を取るだろうと思ったのでした。そして感情的になる娘たち、一方で婿たちは冷静という対応の差も今回はじめて気になりました。肉親には冷静でいられない、義理の親は客観的にみられるというのもあるでしょうけど、女性は感情的、男性は冷静というジェンダー差別と見えなくもない。いずれにしても「古き良きアメリカ」の話だなと感じました。真面目に働き続けて老いてからも果樹園の世話をしていたサム。いよいよ介護が必要になった時には大勢の子供たちが交代で泊まって世話をしてくれます(そのことが決まった日に犬はいなくなるのでした)。以前はこんな風に毅然として老いたいと思ったけれど、それができるのは今の高齢者でギリギリ。おひとり様には世話をしてくれる子供はいないし、経済的な余裕もどこまであるのか。またいつか再読したいと思いますが、その時の自分の心情と社会情勢がどう変化しているかが気になったりもします。(モモ母)


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