「日本国憲法」前文の朗読、たくさんの方にご覧いただき、大変有難うございます。憲法朗読5回シリーズの2回目は、改憲4項目(自衛隊の明記、緊急事態条項、合区の解消、教育無償化の明記)のひとつとして注目される第ニ章 戦争の放棄 第9条です。9条を変えないと日本がウクライナの様になる、日本を守るためには改憲が必要だと主張する人がいて、そうだなと思うかも知れません。でも、基本的なことをおさらいすると、前文の回に書いた様に憲法は「国家権力を縛るもの」でした。9条は「日本がウクライナの様になる」のを防いでいるのではなく、「日本がロシアの様になる」のを防いでいる、更にいうと「戦争をしたがる国家から国民を守るもの」と言えるかも知れません。そう考えると、それを変えたがる政治家達の思惑が何かも理解できるのではないでしょうか。今、改めて9条にどんなことが書かれているか、確認してみましょう。朗読はフリーアナウンサーの塩見祐子さん、イラストはかしわぎまきこさん、解説は関西勤労者教育協会副会長・中田進さん、動画の再生時間は57秒です。
尚、動画のテロップは国立公文書館デジタルアーカイブで公開されているものを参考にしながら、読みやすくする為に旧字を新字に変更したり、改行したりしています。また、朗読では原書にない「一項、二項・・」を加えています。以降もこの形で公開していきます。「再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意した」前文も、引き続きこちらからお聞きください。
《第9条解説》
★9条の誕生とその後
第二次世界大戦の反省から、国連憲章の2条4項で「武力による威嚇または武力の行使」を「慎まなければならない」と規定しています。ロシアのウクライナへの武力侵略は国連憲章違反です。戦後日本国憲法の誕生の背景には、日本国民に「二度と戦争しない」という願いがありました。国連憲章では「慎まなければ」という少し腰が引けた表現が、「国権の発動としての戦争」「武力による威嚇」「武力の行使」を「国際紛争を解決する手段としては永久に放棄する」という「戦争放棄」と定め、放棄の原則をさらに具体的に、2項で「戦力を保持しない」「交戦権を認めない」と徹底したものになり、平和を求める人類の理想となり、「世界の宝」となりました。
ところが1950年6月に「朝鮮戦争」が勃発し、連合国軍最高司令官マッカーサーの指令で「警察予備隊」がつくられ、1952年「保安隊」1954年「自衛隊」になりました。政府は「自衛のための必要最小限の「実力」で、憲法で禁じられた「戦力」にあたらないから「合憲」であるとしてきました。
★改憲派の主張
ロシアのウクライナ侵攻を奇貨として「いまの憲法には自衛隊という文字がない」「緊急事態条項を盛り込み、9条を改正することを最優先」(自民党・西村康稔)、「3歳のときにきていた服を75歳になっても着ているのがいまの憲法の姿だ」(日本維新の会馬場伸幸共同代表)と述べています。いま「自衛隊を9条に明記」・「敵基地攻撃能力の保有」・「核共有」の議論がすすめられ、日本会議大阪事務局丸山公紀氏は「改憲の実現には参院選で勝利することだ」と語っています(5月3日)
2014年7月1日に「集団的自衛権行使容認」が閣議決定され、2015年9月19日には「安保法」が強行され、自衛隊の武力行使の範囲が拡大されました。「敵基地攻撃」も「敵国の中枢」を「殲滅」することも想定し全面戦争の危険性を孕んでいます。しかも防衛予算をGDP1%から2%へ10兆円、12兆円にと。さらに「憲法に緊急事態条項」を改憲案を示しています。これは国会にはからず総理大臣になんでもできる権限を与えるということです。
改憲を強く主張する人々は、侵略戦争や「従軍慰安婦」の反省もなく、アジア諸国との友好と対話の姿勢はありません。「核共有」とはアメリカ大統領が使用最終決定権をもつ核兵器を配備し核戦争の緊張を高めることになります。唯一の被爆国として恥ずべきことではないでしょうか。
★いまこそ平和の声を
75年間、「一人も殺さず殺されず」平和でよかったですね。国際社会の力と平和を愛し、9条を守り、核兵器廃絶を求め運動してきた多くの国民と学者・文化人・ジャーナリスト・諸団体の努力の成果です。「攻められたらどうするか」という声もあります。今大切なことは「分断」を乗り越え、戦前・戦後の歴史を深く学び、国際社会の大きな前進に確信し、語り合うことでしょう。
※次回は5月30日(月)に第13条を公開予定です。