カナリア朗読劇場~「日本国憲法」前文

新たなカナリア朗読劇場は「日本国憲法」の朗読を5回シリーズでお届けします。様々な法律が国民が守るべきことを定めているのに対し、憲法は国がやるべきこと、やってはいけないことを定めています。国会議員、国務大臣、裁判官等の国家権力を縛るものであるということ。1946年(昭和21年)11月3日に交付され、1947年(昭和22年)5月3日に施行された日本国憲法には、11章103条からなる本文の前に上諭と前文があって、前文は「日本国民」が主体となっている点が、かつての大日本帝国憲法と大きく異なります。前文からは制定に関わった人達の新たな憲法に込めた思いや覚悟が伝わって来る様です。朗読はフリーアナウンサー・塩見祐子さん、イラストはかしわぎまきこさん、解説は関西勤労者教育協会副会長・中田進さん、動画の再生時間は3分13秒です。

《前文解説》 
憲法には「恋」という言葉はありません。でも「愛」はあります。前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しょうと決意した。」
平和を「愛」する、素敵でしょう。しかも信頼するのは諸国家でなく「諸国民」です。国家間で争うことがあっても「国民」どうしは仲良くできます。
明治・大正・昭和の日本の政府は日清・日露・満州事変・支那事変そして太平洋戦争と戦争をすすめ、アジアの人々2000万人、310万人の国民の命を奪ってきました。この痛恨の歴史の反省から「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言」しました。戦争ばかりしてきた政府とは「天皇主権」(大日本帝国憲法1889年)の政府です。前文でこの「天皇主権」を否定し「主権在民」を宣言しています。ところが、ところが自民党が示した2012年4月27日の改正草案の前文には「国民統合の象徴である天皇を戴く国家」となっています。みなさんどう思われますか。
「平和を維持し、専制と隷従・圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」
太平洋戦争当時の日本は天皇の専制のもとで平和と自由と民主主義を求める人と組織は徹底して弾圧されました。ドイツではヒトラー、イタリアでムッソリーニの独裁政権でした。日本とドイツとイタリアの三国同盟による侵略戦争と独裁政治を「永遠に除去」しようとする国際社会で、日本の役割を強調しています。さらに「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免がれ、平和のうちに生存する権利」とありますがこれは「平和的生存権」といわれ、9条の「戦争放棄」と並ぶ「権利」として大切な原理です。平和主義という主義という形にとどまるものではなく、一人ひとりの個人にも平和を享受する権利があり、最も基本的な「人権」です。「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」とは「武力以外の方法」で平和構想を提起したり、紛争緩和の提言を行うなど積極的な努力をすることを含み、この前文が9条の指針となっています。
ロシアのプーチンがウクライナへ武力攻撃を始め、すでに二ヶ月をこえ、子どもや女性、高齢者など多く市民の命が奪われています。今まさに日本は「武力」でなく「外交」で貢献すべきときです。
前文の最後がすごい。「全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成すること誓う」。現実が「理想」から離れていてもどこまで「理想」を達成しようと努力しましょう。「全力をあげて」

※次回は5月16日(月)に第9条を公開予定です。


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