10年程前のことですが、京都市営地下鉄「四条」から阪急「烏丸」に向かう通路に、あるドーナツ屋さんが出来ました。連日行列が出来ると話題になった外資系のそのドーナツチェーンには共通点があります。注文カウンターのあるスペースがどこも狭く、一時的にでも客が集中すると必然的に店の外に並ぶことになるよう設計されています。店舗はたいてい人通りの多いターミナルの通路にあって、乗り換える人が自然と行列を目にする場所にあります。そして初日にはサクラを先導させて商品を無料配布します。連日サクラを仕掛ける必要はありません。お金を払って並ばせなくても、行列に興味を持ったお客さんが自ら並んでくれます。こうした仕掛けを鴨猟に使うデコイみたいなもんだと解説している人がありました。デコイとは本物そっくりの鴨の置物。猟の時に偽物を置いておくと、本物の鴨が仲間だと思って寄って来るんだそうです。
四条のその店も当時は連日長蛇の列で、並んで買った人がSNSで「美味しい」と書いているのを多数目にしました。実際に並んだ人は「入店するとイートイン席は余裕があるので行列とのギャップを感じた」とも言っていました。でも、そのドーナツ店の人気は長続きせず、数年後に四条から撤退しました。京都には「出町ふたば」という行列が出来ることで知られる和菓子屋さんがあって、そこは昔も今も変わることなく行列が出来ています。私の個人的な感想に過ぎませんが、ふたばの豆餅や栗餅は何度も食べたくなるけど、試しに買ってみたドーナツは再度買う気にはなりませんでした。私には美味しいとは思えなかったドーナツに何故大勢の人が並び、「美味しい」と思ったのか。それは先に書いた様な巧みなマーケティング戦略が成功したからでしょう。本当に美味しければ、今もお客さんが絶えないはずです。前置きが長くなりましたが、映画評論家の町山智浩さんが2020年にこんなtweetをしていたのが、今も印象に残っています。
今度のファシズムは裏に電通がついてるから手強いぞ https://t.co/cxXMJS4Xqm
— 町山智浩 (@TomoMachi) July 24, 2020
電通はご存知の様に日本の広告代理店の最大手ですが、電通に次ぐ大手広告代理店である博報堂の社員だった作家の本間龍さんが、国民投票で何が起きるかを語ったこの動画は必見です。
広告代理店大手、元博報堂社員の本間龍さん。憲法改悪の国民投票で何が起こるか話されてます。凄い説得力だし、ただただ怖い
pic.twitter.com/tIGhHIPhvv— 君に届け@滑稽新聞 (@akasakaromantei) May 10, 2022
通販生活もこんな意見広告を作っています。
以前もリンクしましたが、改憲の中身を知られると国民に賛成してもらえないので、ムードで攻める戦略でしょう。
これからジャーナリストや評論家の肩書きで、アンフェアな論調での野党のイメージダウンを始める人たちが増えてきます。日本会議が旗を振る改憲勢力の唯一の懸念は国民投票で負けること。これを『反対する野党はダメだカッコ悪い』という「ムード」で乗り切る戦術でしょう。参院選前の発議もあるかも。 https://t.co/1UIQ0BVRSv
— nagaya (@nagaya2013) November 4, 2021
イメージ戦略はマーケティングにたけた広告代理店が最も得意とするところ。(しかも改憲以外でも野党はダメでかっこ悪い印象が、もう既にあります) 本間さんが「改憲に向けて広告代理店がターゲットにするのは無党派や意見未決定層だ」と指摘していますが、今後はアイドルや著名人をデコイにして、意見未決定層の獲得に乗り出すでしょう。美味しくないドーナツ屋さんはやがて閉店しますが、国民投票は改憲ビジネスのいいカモにされて投票すると、その結果が後々まで影響します。明日は憲法朗読シリーズの2回目、改憲4項目のひとつである第9条の朗読を公開予定です。イメージだけで味が伴わなかったドーナツか、昔も今も人気の豆餅か、朗読を判断の参考にして頂ければと思います。(モモ母)