新年あけましておめでとうございます。お正月に葩餅などの和菓子を食べる方もおられると思いますが、和菓子を扱った小説を読むのもおススメです。坂本司の「和菓子のアン」は高校卒業後、大学進学するほど勉強が好きでもなく、専門学校に行くほど好きなこともみつからなくて、デパ地下の和菓子屋「みつや」でバイトを始めた「アンちゃん」こと梅本杏子が、和菓子の魅力に目覚め、成長していくお仕事小説。杏子はちょっと太めで食べるのが大好きな、ごく普通の女の子。勉強が好きじゃないと本人は言ってるけど、日々いろんな発見をする勉強家で、杏子の新しい発見を共有する楽しさがありました。各店舗から人が出ての消防訓練や閉店30分前セール、バックヤードの様子など百貨店業界の舞台裏を垣間見れるのも興味深い。
物語は買い物客とのやりとりや別の店の怪しげな行動などを、やり手だけど意外な一面を持つ椿店長や見た目はイケメンなのに内面は乙女の立花さん、元ヤン大学生の桜井さんといった「みつや」のスタッフが解明していく展開で、「半殺し」や「腹切り」などの用語や「亥の子餅」などの季節のお菓子がキーワードになっています。
続編の「アンと青春」でも上生菓子でこなしは関西、練り切りは関東が主流などの豆知識が為になるし、デパート業界、お菓子業界の事情が垣間見えて興味深い。見てるだけで楽しい、食べれば美味しい、でも意味を知ったらもっともっと楽しくて美味しい、知れば知るほど楽しくなるというアンちゃん。未読ですが、2020年には第三弾の「アンと愛情」も発表されています。「赤毛のアン」も「アンの青春」「アンの愛情」と続いたので、赤毛のアン同様に娘が生まれるまでシリーズを続けて欲しいものです。(モモ母)