Weekend Review~「宵山万華鏡」


祇園祭が終わって約1ケ月、時期外れのレビューになってしまいますが、森見登美彦の「宵山万華鏡」を読みました。三条のバレエ教室に姉と共に通う妹を描いた「宵山姉妹」に始まり、高校時代の友人乙川に連れられて宵山に出かける藤田の話「宵山金魚」、藤田の体験する魔訶不思議な宵山の世界を学生達が作り上げる「宵山劇場」、かつて宵山の夜に娘が失踪した画家である叔父のアトリエを兼ねた家を訪れる千鶴を描いた「宵山回廊」、目覚めると今日は宵山、という日を繰り返してしまう画廊店主の柳の話「宵山迷宮」そして再びバレエ教室に通う幼い姉妹の宵山体験を、今度は姉の目で描いた「宵山万華鏡」と6つの短編が万華鏡のように繰り広げられます。確かに日頃は地味な通りに突如山鉾や露店が並んで様子が一変する祇園祭の宵山の夜は、そこだけ非日常の異世界が現れたようだし、その喧噪から路地奥に入れば急に静寂が訪れる様は、異空間との結界の様でもあります。この作品を書いた当時、作者自身も四条烏丸交差点近く、綾小路のマンションに住んでいたそうで、いつも静かな周辺が異世界と化し、見物客の海に呑み込まれて、自宅に戻るのが大変だったとか。
住んでいただけあって、場所の描写がかなり具体的。姉妹はノートルダム女子大学の裏手にある自宅から地下鉄に乗り、烏丸御池駅で降りて三条烏丸南西に聳えたつ煉瓦造りの銀行の角を曲がって、三条室町西入る衣棚町の4階建のビルにあるバレエ教室に通っています。ちなみに三条室町西入にはないけど、二条室町西入にはバレエ教室があるようです。千鶴と柳がお茶を飲む産業会館地下の喫茶店は「アサヌマ」ですね。今はなくなってしまった「アサヌマ」の様子が思い出されて懐かしい。
金魚鉾だの般若心経を唱える髭もじゃの大坊主だの路地に交互に並ぶ招き猫と信楽焼の狸だの、赤玉ポートワインの瓶だの、これが宵山と他府県の人に思われたら困るような荒唐無稽な混沌ぶりながら、京大生らしき学生が作る芝居小屋みたいな世界は、伝統的な祇園祭とは別の京都のサブカル的要素として違和感なく楽しめました。そして雑踏を泳ぐ金魚のような赤い浴衣を着た女の子が数人紛れ込んでいて、姉妹を魔界に連れて行きそうになっても不思議ではないと思わせるのが、宵山なのでした。さて、来年の祇園祭はどんな形で行われるでしょうか。(モモ母)

 


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