オンライン研修でセクハラに遭遇

先日、私はオンラインで受講していた研修で「リモートセクハラ」と呼ばれるものに遭遇した。

そして、そのことを整理して考えてみた。

その一件を整理して考えたのは、セクハラ発言をした人を責めたいとか、反省させたいとかではなく、最初は、自分の考え方で合っているのかを、セクハラ問題などに取り組んでいる方に聞くためであった。

しかし、整理しているうちに、この発言のこういうところに、こういう問題をはらんでいるということを明らかにして、発信することで、私のように「なんか不愉快だけど、なんかわからない。」「私が過剰に反応しているのかもしれない。」と思ってしまう人が、「ああ、こういうことでしんどかった。」と気持ちを整理するのに役に立つと思った。

場面は、とあるオンライン研修会。参加者30名程度。

そこで、ブレイクアウトセッションという参加者を少数のグループに分けてグループワークをする時間になった。始まる前にホストから注意があった。

「ブレイクアウトセッションの小部屋で、セクハラやパワハラがよく起こります。」

「ホストの目が届かないので、そういうことが起こる。」

「嫌だと思ったら、”ちょっと回線がおかしい”とか言って、メインルームに戻ってください」

私は、それまでそんなことが起こると知らなかったので、「へえ~、そんなことがあるのか」と思っていた。

そして、ブレイクアウトセッションがスタート。私は、3人のグループだった。私以外は、見た目では60代~70代くらいの女性と男性がひとりづつ。私、女性、男性、の3人だった。

画面が3人になった時、私以外のお二人が、「あら。こんにちは…」みたいな感じで知り合いのように見えたので、私が、「お二人はお知り合いなのですか?」と尋ねた。

すると、男性のほうが

「昔、付き合ってたんですよ。」と発言。

その発言を聞いて、女性の顔が一瞬固まる。

私もどう反応していいかわからず、止まってしまった。

 

すると男性が、

「こんなこと言ったら、セクハラって言われちゃうな」と発言。

そこで女性が、「また、そんな、ご冗談を言われて…」と発言。

と、ここまでが、私が遭遇した場面。この後は、普通にテーマに沿った話をした。

 

<この場面を私なりに整理をしてみる。>

私は、とても不快に感じた。その点は2点。

①特別な男女関係にあったということを公共の場で言う。(事実かどうかはさておき)

②上記の発言により、ほかの参加者は発言がしにくくなる。

(①と②)を合わせて、その男性はグループワークの場でのマウントポジションを取ろうとしたのではないか。(注1)

その場にいたときは、私もここまで言語化できなかった。ただ、なんとなく、感覚として、発言を押さえつけらてるように感じたのか、「オンライン会議はもう何度もされていますか?」と女性側から質問されたときに、「そうですねえ~。もう100回以上してますねえ。」と言った。たぶん、私も無意識で抵抗しようとしたのだと思う。「100回以上してる」ということで、その男性に「おまえより、知ってんぞ!」って言いたかったような気がする。不毛な戦いだ。100回という数字が小学生みたいだと思って、自分の抵抗に笑えた。

その後、グループを変更して、グループワークが2回あり、最後のグループワークでまたその男性と同じグループになり、その時はその男性と私の二人しかおらず、私は嫌でしょうがなかった。

その時にその男性は、「私は●●協会の会長と、〇〇会の会長もしていて…」とか肩書をつらつら述べられた。

この男性と私の不毛な戦いは「セクハラ発言」→「オンライン100回!」→「〇〇会の会長」という、全くかみ合っていないものだが、その場で「自分のほうがすごい!」と示し合ってたのではないかと感じた。

また、3人組の時の女性は、日ごろの仕事で関係があるようだったので、〇〇会の会長だから顔を立てないといけない立場だったのかもしれない。だから、一瞬固まったものの、今後の仕事上の関係性のために「ご冗談を…」でお茶を濁すしかなかったのではないか。

このことを、セクハラなどの研修講師もされている方にどう思うか聞いてみたところ、まず、「それは不快な思いをされましたね」と私をねぎらってくれた。そのあと、ホストの注意の直後にそういう行動があったことについて、

「あんな注意されたからって、ビクビクしたりお行儀よくしたりなんてしない、いつも通り」

「オレのやることをセクハラといえるもんならいってみろ」みたいな印象をもつ、と言われていた。

ただ、マウントポジションを取りに来たことも含めて、本人も無意識に、一瞬のうちに力を示そうとした行動なのではないかという話だった。

 

<整理して思ったこと>

☆よい研修だったとしても、このようなことあることで研修内容が頭に入ってきにくくなる。

☆このような発言があるとグループワークでは対等な関係が成立しない。

☆議論がテーマから離れてしまうリスクがある。(私が示したしょうもない抵抗のようなことが起こって議論がずれていく)

☆自分もほかの人を委縮させるような発言には気を付けなければならない。

☆これは、「セクハラ」のような体をしているけど、根本は「パワハラ」なのだ。

☆セクハラ発言に対して「いやらしいことを言われた!」のような伝え方で他者に話しても、「気にせんとき」「流しといたらええねん」「ただの冗談やん」みたいに言われることがある。「上手にあしらえるのが大人の女性」という風潮がある。そのような書籍や雑誌の特集もある。その発言のどこに問題性があるのかを伝えていかないと、「嫌だ」という発言を封じ込めたり、「この程度で騒ぐ私がおかしいのかも」と本人を無力化させることにつながる。

☆私自身が長年の「無力化」の結果、今回の出来事に対して、「私は怒っていいのだろうか?」とセクハラの専門家に尋ねなければ怒ることもできなかった。無力化により自分の感情がわからなくなることがあるのだと感じた。

 

注1:「マウンティング」は、自分が優れていることを相手に見せたい人が、容姿や恋愛、お金、仕事等についての格付けをし、相手よりも上のポジションをとり、その優位性を自慢したり威圧的な態度をとることを意味します。

 


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About 坂本彩 41 Articles
坂本彩(彩社会福祉士事務所) 大学卒業後、20年間、知的障害のある人とかかわる仕事をする。2017年に、独立型社会福祉士事務所を開業。福祉施設のアドバイザーや研修講師、成年後見人の受任、大学の非常勤講師などをしている。障害のある人もない人も一緒に「学び合いの空間づくり」をしていきたい。社会福祉士、介護福祉士、障害者相談支援専門員、そのほか、漢方養生士指導士、漢方スタイリスト、薬膳アドバイザーの資格も持つ。