前回の続きになります。Covid-19の感染拡大がひとまずは落ち着いてきて、学校も再開されるようになりました。学校での感染をどう防ぐのかという課題とともに、3か月に渡る休校によって「遅れてしまった勉強」をどうやって取り戻すのかということも課題になっています。そして少なからぬ自治体で、夏休みの縮小や土曜日の授業実施、一日の授業時間数の増加などの方向性が示されつつあります。3か月も学校から離れざるを得なかった子どもたちにとって、感染対策でピリピリしている学校に行くのもしんどいことであるのに加えて、季節も梅雨から夏になる時期です。無理な「授業時間の確保」は子どもたちと先生方の健康を害することこそあれ、教育面の効果は期待できないのではないかと思います。前回は大阪府知事の方針を取り上げましたが、「それでは2学期の準備もできないぞ」という至極まっとうなツッコミ。
夏休み8.7から16だと8.7.11の2日しか会議や2学期の計画検討準備ができる日がない。教師に休みがないという以前の問題です。カメラの前で喋ることが知事の仕事であるように、子どもの前で喋ることだけが教師の仕事と思ってるんだろう。正確には知事に夏休み期間の決定権はない。https://t.co/AUOvCphUO3
— いしまさ (@ishimasa1985123) May 29, 2020
所詮は学ぶための手段に過ぎない「授業時間数確保」に、ここまで躍起になる背景は、「学ぶとはどういうことか」を深く考えないからではないかと思います。考えるためのきっかけとなる論考を、いくつか紹介したいと思います。
1つは、赤鼻先生として知られる副島先生の文章です。病気で入院している子どもたちのための院内学級から考えます。
赤はなせんせいとして知られる副島賢和先生。先生のあたたかさにあふれる記事です。ぜひご一読ください。
この状況だから考える 〜院内学級の子どもたちが教えてくれた大切なこと〜 #つながれない社会のなかでこころのつながりを|「こころ」のための専門メディアhttps://t.co/69YE9JrmTM
— 金子書房【official】 #つながれない社会のなかでこころのつながりを (@kanekoshobo) May 16, 2020
病気も含めて様々な制約の中、「ワクワクドキドキする学び」をたとえ短い時間でも味わうことは、長い時間をイヤイヤ机に向かわされることよりも子どもの成長に意義が大きいと思います。逆に、「学校の授業がなければ何を学べばよいのかわからない」というのが仮に現実であるとすれば、それは私たち大人が、「学校ってなんだ?」ということをきちんと考えていない証かもしれません。
もう1つは、土佐町の議員でもある教育学者の鈴木大裕さんの論考です。
すごく染み入るものがあった。でもこういう学びができる環境を手に入れる難しさ、今の日本の一般的な生活の背景にある社会の価値観を変える難しさもひしひしと
休校中の子どもたちは本当に学んでいないのか? – 鈴木大裕|論座 – 朝日新聞社の言論サイト https://t.co/64kHeBGPOE— nakanemisa (@asimasik) May 15, 2020
刺激的なタイトルですが、学校を否定しているわけではもちろんありません。学ぶことや成長することはもっと大きなもので、「授業時間確保」に必死になることは、本来の学びを狭い枠組みに閉じ込めて殺してしまう可能性もあるのだと思います。
そしてもう1つ。こちらの指摘も重要です。
コロナ危機で加速する公教育の民営化。こうして大事な教育予算が民間に流れていく。点数に基づいた貧弱な「学力」観が学校<塾の力関係を生み出す。『静岡市と秀英予備校が、市内の全中学生に対する補充学習による学びサポート事業の協定を締結 紀伊民報』 #紀伊民報 #AGARA https://t.co/JMoH5qCbDM
— 鈴木 大裕 (@daiyusuzuki) June 9, 2020
「授業時間の確保」に躍起になるのは、テスト対策を何より重視しているからでしょう。大阪の吉村知事は市長時代に、全国学力テストの点数で各学校への予算配分や教員の給与を決めると言い出したこともありました。そういう「学習時間確保=点数確保=学習」という貧困な学習観は、教育産業の介入を招きやすくなります。「テストの点数上げてみせまっせ」というのは、大規模な教育産業のお得意とするところです。
なお、そもそも日本の学校は1クラスの人数が多すぎるのですが、これを機会に少人数学級の実現を求める動きもあります。私は院生時代にいくつかの小学校を見学させていただきましたが、20人程度のクラスであれば、45分の授業時間内に全員の子どもに発言をさせることができるのです。それより多くなると、黙ってすごす「お客さん」が出てしまいます。Covid-19を機会に教育の改革をというなら、9月入学よりも少人数クラスだろうと思います。
全教の仲間「新しい生活様式で人との間隔を2メートル空けろと言うが今の40人学級では不可能だ。教員には学習の遅れへの対応に加え消毒など感染症対策の業務も生じる。政府は3100人の教員増で賄うというが全国の小中の10校に1人しか配置されず焼け石に水。少人数学級を実現できる教員の大幅増が必要」 pic.twitter.com/8q7RINGERQ
— 国公労連 (@kokkororen) June 4, 2020
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