成年後見人として考える、金銭管理と認知機能とその支援。

私は4月生まれなのですが、毎年楽しみな外食は今年は自粛し、ひっそりと家で誕生日を迎えました。また1歳の年を重ね、感じることは「いろいろと面倒と感じることが増えてきた・・・」ということです。チマチマとした作業が面倒で、子どもの頃なら喜んでしていたことも、もうそういう気持ちにもなれません。スイカの種を口の中で避けながら食べるのが面倒だから食べたくない…そんな気持ちが起りつつあります。

職業として成年後見人をしていると、ご高齢の方の金銭管理について、いろいろな課題を見る機会があります。このコラムでは、私がこれまでに直面した金銭管理上の課題と、認知機能の低下の関係について考えてみたいと思います。

認知症というと、おそらく大半の方が「物忘れ」が起るイメージをお持ちだと思います。財布を置いた場所を忘れて探し回ったり、場合によると盗られたと思い込み大騒ぎになったり…。記憶力が低下すると、モノの管理に影響がでます。しかし、認知症の症状は、記憶障害だけではありません。見当識(日時・場所・人を把握すること)や、予測予想、計算をする力、感情をコントロールする力など、脳が行っている様々な働きに対して、さまざまな影響が出ます。また、記憶障害にしても、記憶というものは、即時・短期・中期・長期のように時間幅で分けられたり、モノの名前、人の名前、操作の方法や使い方、言語、物語のように記憶内容によっても分けられるように、さまざまです。

その中で、金銭管理をする際に必要な能力とは何でしょうか。私は以下のように考えています。

 

1 お金をいくら持っているか把握できること・・・記憶力や計算力

2 どこの金融機関に預け、暗証番号と印鑑を覚えている・・・記憶力

3 これから何にお金が必要かを把握すること・・・計算力や予測力

4 収支を考えてお金をつかうこと・・・感情コントロール力や計算力

 

記憶力は、即時から長期まで、さまざまな時間幅での記憶が保持でき思い出せることが必要です。もし、今さっきのことを記憶できなければ、「使ってないのに、お金がない!」と考えるでしょう。一方で、ずっと以前の記憶が消えてしまうと、どこの金融機関に預けているのかが分からなくなります。

ちなみに、金銭管理の中で大切なのは、記憶力に加えて、感情をコントロールできる力が維持されていることのように感じます。これは認知症等で低下する場合もありますが、そうでなくても、私たちは無駄遣いや衝動買いといったことをして、お金を思わず使ってしまうこともあるので、注意が必要です。持っているお金をパッと使ってしまうと、後になって足らなくなることがあります。将来を予想して、計算して、許された範囲内で使うということを、多くの人はごく当たり前にしていますが、よく考えるとその為にはさまざまな認知機能を駆使しています。

成年後見人、保佐人、補助人は、ご本人の財産を本人に代わって管理し、毎日の暮らしに行き詰まらないように金銭管理を行います。生きていく中で、「お金」というものがとても大切なものである、というのは、認知症になっても多くの人が強く思っていらっしゃることです。歳と共に、低下する身体機能とともに、こまごまとした計算が面倒になったり、支払いが面倒になったり、そのうち何がなんやら訳がわからなくなることもありますが、一方で、「お金は大事である、無駄遣いをしてはいけない、もったいない」という気持ちを強く持って、必要な出費さえも惜しんでお金を守ろうとされる場合もあります。

成年後見制度を利用されている方にとって、ご自身ができるところはご自身でしていただき、できにくい部分をサポートすることで、ご自身の人生、ご自身の暮らし、ご自身のお金や大切なものを尊重し、より良い人生を過ごしていただきたいとおもいます。そういう思いから、担当している被後見人の方々が、それぞれ心身の状態はどうか、これまでどのようにお金の管理をされていたか、今後どのようにしたいと考えていらっしゃるのかはできるだけ確認して、人生のここから先をともに歩む後見人でありたいと思います。「金銭管理の面倒だったり苦痛や難しい部分はサポートします、でも、出来る部分はお願いします、あなたのお金をどう使っていくかは一緒に考えましょう」と、きちんと伝わる言葉で伝える後見人でありたいと思います。

今年はおとなしく迎えた誕生日ですが、思い返せば、一昨年はプレゼントに土偶を頂きました。部屋の片隅に眠っていますが、何時の日か、きちんと飾ろうと思いつつ・・・もうしばらく部屋の片隅に眠らせておこうと思います。

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About 森保純子 45 Articles
兵庫県在住。「福祉×ICTで、毎日を安心安全に、心豊かに。あなたに寄り添う相談援助」をモットーに、『森のすず社会福祉士事務所』開業。成年後見等による高齢者・障害者個別支援、認知症に関する地域啓発活動、防災と福祉に関する啓発活動、スクールソーシャルワーカー、各種研修講師、Webニュースライターなど、ミクロからマクロまで広域な活動に取り組んでいる。毎週「月曜日はカレーの日」としてカレー店めぐり実施中。将来はカレーを食べながら話ができる相談事務所を開設したい。社会福祉士、介護支援専門員、2級FP技能士、第2級アマチュア無線技士。