ウェブ会議が増える便利さと嬉しさと、その反面。

緊急事態宣言の解除の話題が聞こえ始めていますが、私の身の回りの福祉業界では最近より一層ウェブ会議が盛んになっています。

10年以上前の話になりますが、IT企業に勤めていた頃は、ウェブを使ったミーティングはすでにかなり普及していました。私は関西の支社に務めていましたが、東京本社と話をするときや、海外支社と話をするときは、通話料がかからず顔も見ることができるシステムはとても便利でした。使うまでは「食わず嫌い」のような感覚が起ることもありますが、一度使うとその便利さと簡単さで、気軽に使う道具になっていきました。

それから長い日が経ち、私は福祉業界に転職し、通信やウェブ技術とは離れた仕事をするようになりましたが、ここにきてやっとの普及が嬉しいような、今更ながら戸惑うような不思議な感覚です。

ここ2か月ぐらいで、ウェブ会議や、オンライン飲み会の機会が増えました。大学や専門学校では、オンライン授業が導入されていると聞きます。義務教育の現場でも、オンラインで話ができるシステムを取り入れようとしている自治体・教育委員会があります。

一気に、数年分の進歩が、この数か月の間に起こっています。

喜ばしいことですが、一方で、取り残される人もいるでしょう。徐々に進む進歩の中では調べて悪戦苦闘したり、教えてもらう時間が取れますが、今のスピードと「ちょっと家にきて、設定して教えて」ができにくい状況では、情報格差(デジタルデバイド)は、これまで以上に進みます。

先日、ウェブ会議中に「アプリの更新をしておかないと、次の会議ではログインできない可能性があるので、注意してください」という話が上がりました。ここからは、議題そっちのけで、アプリの更新方法について情報を求める声と不安が広がりました。

今、ウェブ会議に参加できている人ですらその状態なので、参加を躊躇したり、参加する環境や道具を持っていない人にとっては、参加へのハードルはより一層高いのであろうと想像します。

新型コロナウィルスは、社会に様々な影響をもたらしています。人間の工夫は力強いもので、窮屈で不便な世の中で、何とかやりくりしようとし、意義や楽しみをみつけています。でも一方で、新しく便利なものの普及は、それを手にできる人とできない人の間に、新しい差を生じます。

ICTが活用できる環境にいる子とそうでない子、自宅からウェブ会議やオンライン飲み会に参加できる人とそうでない人、一人ずつスマホなどを持っている家庭とそうでない家庭。ICTの急激な普及は、コンピュータや通信技術などへの理解や適応力だけでなく、経済的な背景も相まって、情報格差、教育格差、仕事格差を拡げ、最終的には個人の経済格差につながる可能性があります。

もちろん、これまで移動がしにくかった人が気軽に会議や飲み会に参加し交流する機会が増えたり、交通費が節約できたり、移動時間が節約できるなど、利点もたくさんあります。

私たちは、新しい技術を迎え普及するとき、その便利さを享受する喜びと共に、それが使えない人や使えない場合のことも考える必要があると感じます。日々の生活に課題や困難を抱える人を支援する福祉職にとって、これからのより一層、ネット利用が進むであろう社会での生活支援においては欠かせない視点です。

特に、情報通信技術の進歩は目覚ましく、それはまるで「どこでもドア」に匹敵する場合もあるのですが、一方で現実に会いに行けるドアではないこともしっかり承知して、触れ合える距離感のお付き合いも大切にしたいものです。

 

最新技術もいいのですが、古きよきものもたくさんありますね。私のこの2か月の炊飯は、土鍋です。いろいろ面倒で、火加減も難しく、今の私の技術では炊飯器に完敗なのですが・・・。でも、なんだかとても美味しいのです。新しいものにも、昔からのものにも、それぞれの良さがあり、取り入れるバランスを考えることで、暮らしはより充実しています。

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兵庫県在住。「福祉×ICTで、毎日を安心安全に、心豊かに。あなたに寄り添う相談援助」をモットーに『森のすず社会福祉士事務所』開業。成年後見等による高齢者・障害者支援、認知症の方と家族の支援ならびに防災と福祉の地域啓発活動、スクールソーシャルワーカー、各種研修講師などの活動に取り組んでいる。2022年から同志社大学社会学研究科の後期課程博士課程院生。カレーと豆好き。犬大好き。社会福祉士、公認心理師、防災士。介護支援専門員。第1種大型自動車免許、2級FP技能士、第2級アマチュア無線技士。