Weekend Review~「神様はいますか?」

20年前に「コンセント」という小説でデビューした作家・田口ランディさん。コンセントは直木賞の候補にあげられた作品で、映画化もされました。私が彼女の存在を知ったのは、小説より以前のネットのメールマガジンです。ブログやインスタグラムなどのSNSではなく、まだ珍しかったメルマガの彼女の内容はいつも切り口がするどく、心の端をスイッと撫でていくような感じで配信を楽しみにしていました。
「神様はいますか?」は、廃刊になった『鳩よ!』という文芸誌に連載されていたものが文庫化された本だと購入してから知りました。あとがきに、連載途中の2001年9月11日にニューヨークのテロ事件が起こり、作家自身も改めて読み直すと当時の複雑な心境が飲み込めるとあり、それを知った上で再度、読み直すとまた本の印象が変わります。
本の内容は、質問にランディさんが鋭く優しく、時におもしろい視点で回答していくスタイル。タイトルにもなっている”神様はいますか?“の問いに対しては、「たぶん、いると思う」という書き出しで始まります。
で、わたしも、たぶんいると思う、いや、どちらかといえば「必ずいる」に近いかなあという考えです。彼女の考える(印象としての)神様は、子どもの頃は母親の影響から「神様は怒りっぽい」、そして15年後にはある経験から「神様は結果主義であり、お願いすると聞いてはくれるけれど、そのプロセスにはこだわらない」というものになり、さらに「全身全霊の問いがあるところに神は現れる(らしい)」という存在から、最後は「神様は、何もしない。神様は、何も答えてくれない」に落ち着いていくことが書かれています。その経過は読んで楽しんでいただくとして、私個人としては、(ここでいう神様は宗派とか関係なく)「神様は(ほぼ)いると思う。そして神様のメッセージとか、私の願いや問いかけに、神様は“誰か”を通して答えてくれることもある(ようだ)」という感じです。ようだ、というのは自分が、それが答えだ、と気づけていないこともあるだろうということです。
神様の有無についてだけではなく、「死んだらすべて終わりですか?」「人と人はわかりあえますか?」「友達って何でしょう?」「魂は存在しますか?」「人生は生きるに値しますか?」など12項目の質問に、ランディさんなりの考えが回答として展開されていく一冊です。
なかでも本の中扉には、私がとても好きな問いかけと答えがあります。
質問「どうしたら、楽しく生きられるの?」
答え「疑問をたくさんもつことです」。
それだけしか書かれていないページ。
私はほぼ毎日、しょうもないことに疑問を感じながら過ごしています。ただし答えを努力して求めず、ほわんと流してしまうことも多いのですが、疑問を感じることは、“楽しく”生きるには役立つんだなあ。でも、あまり楽しくは生きられていないので、それはそれぞれの疑問に真剣に必死で答えを求め、見つけ出す動きをしていないからだろうなと思っています。
あと、項目ごとに登場する、しりあがり寿さんの人生相談マンガがとてもいい味わいを本に添えているので、そのチョイスと感性に絶賛です。(ふるさとかえる)


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