介護保険制度が始まったのは、2000年。同時に始まったのは、成年後見制度です。
それまでのいわゆる「措置の時代」では、利用者が契約主体となり介護サービスを自ら選び契約をして利用することはありませんでした。しかし、契約をする制度を採り入れることで、「契約ができない人、できにくい人」に不利益とならないよう、財産管理や身上監護を行い意思決定支援をサポートする成年後見人等が必要になりました。介護保険制度と成年後見制度は、両輪の関係であると言われ、ともに認知症等で判断が難しくなっている人を支え、尊厳を守る制度です。
ところで、「後見爆発」という言葉を耳にしたり目にしたりしたことはありますか?
人口爆発といえば、人口が急激的に増えることを言います。同じように、後見爆発とは後見が必要な人が爆発的に増えるということです。「後見爆発社会になる」などという表現を使いますが、2025年に団塊の世代が後期高齢者となり2040年には多死社会が到来すると言われているその間も、後見爆発社会の到来は実現しています。
私は社会福祉士として成年後見等を受任し、生活に必要な金銭の管理や契約、意思決定の支援などを行っていますが、一人で担当できる人数にはやはり限りがあります。毎月の支払、突発的な受診や入院、身体状況に合わせた転居や入所…銀行に足を運び、自宅や施設に足を運び、他の支援者と連絡を取り…さまざまなそれぞれの生活に合わせ、いろんな支援が必要です。また、「リハビリシューズを買って持っていく」「季節の上着を買いに行く」など、本来は後見人の仕事ではないものの他の支援者でできる人がいない場合には、行うことも多々あります。完全に一人で行うには、休みなく働いても当然限りがあるのは明白です。
成年後見人等になる人は、かつては親族が多く選ばれていましたが、最近では弁護士・司法書士・社会福祉士の専門職が選ばれる場合が増えています。しかし、専門職の人数はごく限られています。最近では、法人後見や市民後見人が受任する場合も増えてきました。特に、市民後見人は、これからますます育成が進み、活躍が期待されています。
私は今40代半ばなので、2040年には60代半ば、2060年には80代半ば…果たして、私が認知症になったとき、私の後見人になってくれる人はいるか、不安です。
後見爆発社会が到来したとき、どうやって必要な支援を届け、安心できる暮らしを支えられるのか?「認知症になっても安心して暮らせる地域」を求めて、声掛け訓練や認知症サポーター養成講座など、さまざまな取り組みが行われていますが、成年後見制度に限らず、財産を守り判断を支える仕組みづくりとその普及も、みんなで取り組むべき課題だと思う今日この頃です。