Weekend Review~「ポプラの秋」

湯本香樹実は「夏の庭 The Friends」が有名ですが、それ以外はあまり知られていなかったり、高く評価されていないように思います。確かに他の作品を読んでみると期待はずれだったものも少なくないのですが、私が「夏の庭」と同じか、それ以上に好きで、愛おしいと思えるのが、1997年に出版された「ポプラの秋」です。
父の急死から間もない頃、千秋は母に連れられて見知らぬ駅で郊外電車を降ります。駅前商店街を抜けていくと住宅街の屋根の間から高い木が飛び出し、高いところの葉っぱが風もないのにゆさゆさ揺れていて、その光景が目に浮かぶようです。庭にその木があることから「ポプラ荘」と呼ばれるアパートに引っ越した千秋は、大家のおばあさんやアパートの住人と交流を深めて行きます。自分が亡くなったら、天国に手紙を届けてくれるというおばあさんの言葉を信じて、せっせと父に手紙を書き続ける千秋。思いを綴ることで、気持ちが整理されていくことってありますよね。突然いなくなってしまった父に言いたいこと、伝えたいことがたくさんあったはず。それは母も同じ。母だけでなく、いろんな人とおばあちゃんは約束をしていたのでした。
代表作の「夏の庭」がそうであるように、湯本香樹実の小説には「お年寄りと子供の交流」と「死の予感」が繰り返し描かれています。彼女は児童文学のカテゴリーに入るようですが、「ポプラの秋」は喪失感や喪失の予感を携えた大人の心にも、温かなものを残してくれます。(モモ母)


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