「後見人がぜんぜん話をきいてくれない!」という声を、時々耳にします。私は仕事で後見人をしています。私が担当する当事者さんが、そう思っていないといいな…と思い、身が引き締まる瞬間です。
ご存知の方も多いと思いますが、「成年後見制度」について簡単に説明すると・・・。
まず、裁判所が介入する「法定後見」と個人間の契約で成り立つ「任意後見」に分けられます。「法定後見」では判断力などの程度により「補助」「保佐」「成年後見」の3類型に分けられますが、どの類型にあたるのかは医師の診断書や鑑定書と裁判所での調査情報から最終的な決定は裁判官が行います。当事者の支援として何ができるのかは、類型と代理権や同意権の内容によります。また、誰が後見人等になるのかは、最終的には裁判所が決定します。一方、「任意後見」は、当事者と支援者との双方の合意で成り立ちます。その内容は任せる内容から報酬にいたるまで、公正証書に残します。
法定後見はそれが必要な段階で申し立てられます。確かに必要な段階で必要な支援者が着任するのは良いことなのですが、一方で当事者や周囲が想像したような人とは違う人が着任する場合があるというのは、人生の残りの時間を共に歩む存在(後見人等を変更するにはそれなりの理由が必要で簡単には変えられない)だと考えた場合、なんともいいにくい気持ちになる場合もあるでしょう。
一方、任意後見の場合は、誰に自分のことをまかせたいかは、自分で選べる点は、法定後見にはないメリットです。もちろん、内容を打ち合わせして、公正証書を作る作業を自分でしなければならないというのは、なかなかの労力です。その点で、「やっぱり、まだ今はいらないし、よく考えてからにしよう」と後回しにしたくなる気持ちが起こりやすいかもしれません。費用面も、法定後見等の開始申立てよりは費用が必要です。このあたりは、デメリットと言えるでしょうか。
さらに付け加えておくと、「任意後見」というのは、例えば認知症で判断力低下が起こった時に『任意後見、開始します!』という手続き(任意後見監督人の選任)を行うのですが、それまでには『お元気ですか?』と確認する「継続的見守り契約」や、判断力は正常であってもケガや病気で入院を余儀なくされ財産管理ができなくなった場合に備えた「財産管理委任契約」、また死後について任せる契約など、各種の契約を行うことによって、生活や健康の状態に応じた支援を受けることができます。意外と便利なところもあります。
とはいえ、なかなか敷居が高い任意後見制度。自ら「選ぶ」という点では、法定後見制度よりははるかに自由で、自分の思う生き方を実現しやすい制度です。最終的に使うか使わないかはいいとしても、そういう制度があること、ある程度の仕組みを知っておくことは、これからの長寿社会を生きる上では大切だと思います。
でも、なんか難しくてややこしいですね。質問や相談が増えてきているので、上手に説明できるように日ごろから説明力を鍛えておこうと思います。