Weekend Review~「ワーキングガール」

映画「ワーキングガール」 1988年 マイク・ニコルズ監督

元号が令和となっておよそ4ケ月。平成直前の昭和63年(1988年)に上映された「ワーキンガール」について書いてみたくなりました。昨年末だったかBSで久々に放映され、懐かしさに心がキュン(時代に合わせて懐古的に)となったからです。1988年といえば日本はバブル景気真っ盛り。そしてリクルート事件発覚、青函トンネル開通、東京ドーム完成、雑誌「Hanako」が創刊されたのもこの年でした。

映画の時代もまさに同じ頃、好景気に沸くアメリカのニューヨーク・ウォール街を舞台に、証券会社の秘書として働く主人公(テス)が、学歴社会の差別やセクハラまがいの行為にも屈せず、さらに同年齢でM&A部門の女性上司に就いて、ようやく自分の能力を認めてもらえると期待するも、彼女の裏切り(アイデアを盗用)に遭い、きわどい手段を使いながら対抗し、最後は引き抜きによってのし上がる、あからさまなサクセスストーリーです。監督は映画「卒業」でアカデミー監督賞を取ったマイク・ニコルズ。主演はメラニー・グリフィスでゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。

冒頭、映画のテーマを思わせぶりに伝える“自由の女神像”の顔のどアップから、カメラは徐々に引いて、アッパー・ニューヨーク湾を行き来する船(主人公が通勤に利用する船)、そしてあのワールドトレードセンターへとパン。この間、バックには「Let The River Run」(アカデミー歌曲賞を受賞)が流れ、オープニングですでに盛り上がります。30年以上経っても、たまにラジオからこの歌が流れてくると、気力がわく名曲です。

昨今、この手の映画やドラマはあまり見ない気がします。すでにある地位を確立した女性や、医師、弁護士など専門職で活躍する話は盛り上がりを見せますが、これほどの成りあがり上昇志向の強い女性を、もう描かなくともよい社会なのでしょうか。もしくはこんな気概は、若い人にはウザい、痛いという感じなのか。劇中で、必死にのし上がろうとするテスに、同僚がバカな夢は見るなと諌めます。それに対して「人生を変えたい。(30歳で)さんざんこきつかわれ、何も達成せずに終わるなんてまっぴらよ」と吐き捨てるテスのような精神は、新しい時代を迎える日本には合わないのか、それとも違うスタイルが良しとされるのか。

余談ですが、知人が経営する結婚相談所では、先に書いた専門職、いわゆる手に職のある女性たちは結婚しても働くのは当たり前ですが、多くの女性はできれば専業主婦希望とか。望む望まないは別に彼女たちの多くは派遣かパート勤務で、結婚はできるだけ安定収入の夫と家庭を築きたいというのが婚活の本音にあるそう。反して男性の多くは共働きを希望しているというギャップに、ご縁のサポートも苦心しているとか。もちろんすべてではありませんが。

個人的な考えですが、現代の「カッコいい女性(憧れる女性)」は、80年代90年代の女性像を経て(学習して)、辿りついてきた姿であり、肩に力を入れてない風に見せて、でも何か専門職(技術)を通して自分らしさを確保している。仕事もして、結婚もして、子育てもして、家事もそれなりにこなす。離婚もぜんぜんアリ。ドキュメンタリーテレビ番組「セブンルール」に登場するような女性像を、マスコミがいち早く勘づいて、そこに憧れるように作り上げているような気がします。映画でテスがあの手この手でのし上がっていく姿に憧れさせたように。

ところでずっとひっかかるタイトル「ワーキングガール」。これは原題通りです。30歳設定の主人公に対して、ガールは意味深だと、ずっと気になるところです。

バブル景気、それがはじけてバブル崩壊、暗黒時代などなどいろいろあった平成の終りに、なんとも痛快で景気の良さげな映画でシンプルに気分をハイにしてみるのはいかがでしょうか。(ふるさとかえる)

 


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