かわらじ先生の国際講座~水産物禁輸をめぐる日本の敗訴

今月12日、「韓国の水産物禁輸をめぐり、WTO最終審で日本が逆転敗訴」したとのニュースが流れました。どういうことですか?

まずWTO(World Trade Organization、国際貿易機関)ですが、これは不当な貿易制限を除去し、自由で公正な交易を促すための国際機関です。スイスのジュネーブに事務局が置かれ、国家間の貿易紛争の処理も行います。つまり貿易問題における裁判所としての役目も果たしています。韓国は福島第一原発事故の影響を重視し、2013年9月以降、福島、岩手、宮城など8県産の水産物の輸入を全面禁止しています。日本はこれを不当とし、WTOに提訴しました。一審では日本の要求が通りましたが、上級審(最高裁に相当します)がこれを却下し、最終的に韓国側の主張を支持したのです。

それはまたなぜですか? 日本の海産物から放射性物質が検出されたのでしょうか。

いえ。基準値を超えるセシウムなど検出されてはいません。ですから日本側は勝訴を確信していましたし、韓国さえこの結果には驚いたようです。要するに今回は具体的な調査データが議論されたのではなく、「海洋や土壌なども含め、まだわれわれが知らない汚染被害が見つかる可能性がある」との韓国側の言い分が支持されたわけです。

となると、単なる調査結果では不十分なのですか? しかし可能性を否定するのは至難のわざでしょう。この国際的反響も心配です。

実は日本食品の輸入規制をしている国は韓国だけではありません。日本国民の多くは自覚していませんが、アメリカ、中国、台湾、EU、ロシア、アラブ首長国連邦、モロッコ、エジプトなど23ヵ国・地域が輸入制限、もしくは調査証明書の添付義務など、様々な形で日本側に制約を課しているのです。

2011年3月の大震災と原発事故からもう8年も経つのに、日本はまだこんなに多くの国々・地域から信頼されていないのですね。国内的には十分に安全が証明されたと思っていましたが。

海外の目はそれほど厳しいということです。現に事故現場では相変わらず放射性物質が排出され続けていますし、汚染土や汚染水などの保管場所も限界に近づき、なんらかの形で海に放出せざるを得なくなっていると聞きます。本音のところ、日本国民でさえ不安を抱いています。しかもこの件に限らず、政府は過去に様々な情報秘匿や公文書改ざんなどを行ってきました。レオパレス21の施工不良問題に限らず、民間企業の偽装事件もしばしば起こっています。ですから政治家その他の公的立場の人間の言葉に全幅の信頼が置けないのです。

来年は東京オリンピックも開催されますし、海外の日本への注目度はさらに高まるでしょう。それゆえ一刻も早く国際的な信頼を勝ち取る必要があるように感じます。そのための策はあるのでしょうか?

発事故の処理は、日本だけで抱え込まず、国際的管理下に置くことが得策と思います。むろん予算は日本政府が出します。アメリカやロシアを始め、この分野における先進地域のスペシャリストの知恵を借りるのです。韓国の代表を含めた国連機関にも参加を要請したいところです。そうすることでより多くの英知が結集できると同時に、情報の透明性も保証されます。中立の立場から厳しく安全をチェックし公表すれば、日本の水産物に問題がないことも各国に説得しやすくなるでしょう。国家の体面にばかり囚われていると、日本はいずれ孤立してしまうかもしれません。

—————————————
河原地英武<京都産業大学外国語学部教授>
東京外国語大学ロシア語学科卒。同大学院修士課程修了。専門分野はロシア政治、安全保障問題、国際関係論。俳人協会会員でもあり、東海学園大学では俳句創作を担当。俳句誌「伊吹嶺」主宰。