今月の21日(一部は22日)、各新聞に「幸福度」ランキングの結果が載っていましたね。日本は世界で58位とか。そもそもこのランキングはどんなものなのですか?
国連の「持続可能な開発ソルーションズネットワーク」という機関が中心となって、毎年3月20日に、「世界幸福度レポート」という調査報告を発表しています。ちなみに3月20日は、国連が「国際幸福デー」と定めている日なのだそうです。このレポート作成にあたっては、アメリカの主要大学の教授など多くの社会学者が参加しています。レポート自体は130ページほどの分量があり、非常に詳細な分析がなされています。次のウェブサイトに全文公開されています。ただし英語ですが。
「Download the Report」をクリックしたら全文が一気に表示されました。カラフルできれいな誌面ですが、なんだか難しそうです。簡単に調査方法を説明してください。
対象は156ヵ国・地域。「地域」というのは、国際法上は中国の一部とされる台湾や香港を含むからです。で、この国・地域からそれぞれ3000人を選び、その国・地域の国内総生産(GDP)、健康寿命、寛大さ、社会支援体制、自由度、汚職の度合いといった項目ごとに、1~10の間で採点してもらいます。それと専門家の客観的な分析データを組み合わせ、総計して世界ランキングの順位付けを行うのです。
調査結果からどんなことが読み取れますか?
上位は北欧などのヨーロッパが占めます。1位フィンランド、2位デンマーク、3位ノルウェー、4位アイスランド、5位オランダ、6位スイス、7位スウェーデン、8位ニュージーランド、9位カナダ、10位オーストリアといった具合。他方、下位は想像されるとおり、紛争が絶えないアフリカや中近東諸国で、最下位は南スーダンです。日本と近しい国では、アメリカが19位、韓国が54位、中国が93位です。
日本の58位は予想外に低い順位でした。何が問題なのでしょう?
2015年は46位、2016年は53位、2017年は51位、2018年は54位ですから、ずっと低迷しています。ただ、今年は過去5年間で最も順位を落としました。項目ごとにみると、GDPは24位、そして健康寿命は2位とトップクラスなのですが、社会支援体制は50位、自由度は64位、そして(社会の)寛容さは92位で、こういった項目のせいで総合順位が下がったのでしょう。
日本人はこの現実をもっと自覚したほうがよさそうですね。
はい。本当はこの国が国民を幸福にしていないことを、みな薄々と感じているのではないでしょうか。特にカナリア倶楽部の「新着情報」を毎日チェックしている人は、この国でいかにひどいことがまかり通っているか、痛感しているはずです。しかし、たとえばテレビのバラエティ―番組をみていると、芸能人が和食を食べながら「日本人に生まれてよかった」と言いながら陶酔した表情を浮かべたり、訪日外国人のインタビューをこれでもかというくらい流して、世界中の人々が日本に憧れ、日本人になりたがっているかのように報じたりしています。まるでマスコミがこぞって国民に、日本こそ世界一幸福な国なのだと思い込ませようとしているみたいです。
なるほど。マスコミによる自己美化は異常かもしれませんね。
もう一つ言いたいことは、少子化こそ日本の最大危機であるかのごとく政治家は論じ、いろいろな政策を打ち出していますが、本当でしょうか。幸福度が上位の北欧諸国は、日本に比べはるかに人口の少ない国々です。それでも福祉は充実し、物心共に幸福な生活を送っているのです。むしろ人口がもっと減少したほうが幸福度が高まるのではないか、という仮説を立てたくなります。人口が減ると財源が厳しくなるというなら、国家予算の使い方にこそ問題がありはしないか、と問いたいのです。
ところで最近、四角大輔という人にちょっと注目しています。この方は日本でのキャリアを捨て、幸福度第8位のニュージーランドへの永住を決めました。いろいろ本を書いていますが、人間にとって幸福とは何かを突き詰めて考えた末、ニュージーランドでの暮らしを選択したそうです。とりあえず、次のインタビュー記事を読んでみて下さい。特に若い人たちに参考になるかもしれません。
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