Weekend Review~「おおきな木」

村上春樹の新訳で話題になったシェル・シルヴァスタイン作の絵本ですが、慣れ親しんでいるせいか、本田錦一郎訳が個人的にはしっくり来ます。初めて出会ったのは高校の頃。アメリカ・デフシアターが来日公演でこの作品を上演するのを支援した黒柳徹子が(おそらく「徹子の部屋」で)紹介していたのがきっかけだったような・・・。シルヴァスタインは倉橋由美子訳の「ぼくを探しに」や続編の「ビッグオーとの出会い」、「歩道の終わるところ」も読みましたが、最も惹かれたのが「おおきな木」。リンゴの木は友だちの少年に果実も枝も幹も与え続けます。長い歳月を経たラストが印象的。繰り返されるフレーズ「the tree was happy」を村上春樹はそのまま「木はそれで幸せでした」と訳していますが、本田錦一郎の「木はそれで嬉しかった」に切なさを感じます。「but not really」の訳も異なります
余談ですが、大人になって洋書を読んだ時に木が「she」で表現されていることにちょっと驚きました。果実をつけ、少年に無償の愛を与え続けるリンゴは母性の象徴として描かれている訳ですから、考えれば女性なのは当然なのですが、初めて読んだ時は老木になる姿がおじいさんを連想させたせいか、男性として読んでいました。男の子はくまのぬいぐるみのことをメスだと思い、女の子はオスだと思っていると聞いたことがあります。リンゴの木を異性として捉えていたことに気づき、その意味でも興味深い作品です。英語の朗読もあったので、リンクしておきます。村上訳との読み比べも興味深い。昔読んだ人も年齢を重ねて再読すると一層感慨深いものがあります。(モモ母)


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